業務経歴から1つを選択して、その業務の詳細を720字以内で記載します。
口頭試験の重要な審査ポイントになります。そのため、業務内容の詳細は受験申込書の中で一番時間を費やすことになります。
全般
口頭試験の試問事項のうち、技術士としての実務能力が対象になります。
技術士としての実務能力は、①コミュニケーションとリーダシップ、②評価、マネジメントが該当します。
コンピテンシーを意識する
業務経験の詳細を720字で記載するには、文字数が全く足りません。そのため、業務の詳細を事細かく記載することはできません。
ここで記載するのは、コンピテンシーにより課題が達成できたことを試験官に伝わるように記述しましょう。
コミュニケーション
上司、同僚、クライアントやユーザ等、多様な関係者との間で、どのように意思疎通を行ったのか。
海外業務の場合は、語学力による意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を、どのように理解し関係者との間で協調したのか。
リーダーシップ
明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を、どのように調整し取りまとめたのか。
海外業務の場合は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、どのようにプロジェクト等の事業や業務を遂行したのか。
評価
業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、どのように次の段階や別の業務に資するのか。
※文字数の関係条、業務上の各段階における結果の記載は困難でしょう。最終的に得られる成果や波及効果をメインに記載しましょう。
マネジメント
業務の計画・実行・検証・是正等の過程において、品質、コスト、納期、生産性、リスク対応、技術的な要求事項の特性を満たすために、どのように人員・設備・金銭・情報等を配分したのか。
創意工夫
創意工夫は、問題解決にあたっての着眼点、具体策、成果、評価等のことをいいます。
問題を解決するにあたって、
・なぜその解決策を考えたのか(着眼点)
・具体的に何をしたのか(具体策)
・何が得られたのか(成果)
・今後はどのようになるのか(評価)
をストーリとして書いていきます。
図表は使えない
業務経験の詳細には図表を記載することができません。そのため、図表を使わないと説明できないような内容の記載は避けましょう。
口頭試験ではホワイトボードが用意されていますが、使用する機会はほとんどありません。
(機械部門では、ホワイトボードの使用率が高いようです)
文字だけで伝わる業務を選定しましょう。
業務内容の詳細の書き方
まずは、全体の構成を考えましょう。
私のオススメの基本的な構成例です。これをベースに、業務内容に合わせて変えてもOKです。
タイトルをつける
業務内容の詳細の1行目はタイトルをつけましょう。
特段決まりはありませんが、これから記載する業務がどんな業務なのか、わかりやすいタイトルにしましょう。
業務概要
これから記載する業務内容の導入部分です。
この業務でどんなことをしようとするのか、この業務が達成できれば何ができるのか、顧客からの要望は何だったのか、などなど
2〜3行程度の記述量でOKです。短く、かつ、分かりやすく表現しましょう。
立場と役割
立場
自分自身で判断し、実行できる立場を明記しましょう。
経歴書に記載した地位・職名と矛盾しないようにしましょう。
役割
この業務で、自分自身は何をしたのかを記載しましょう。
例
私は○○責任者として、××に関する計画、設計を行った。
私は〇〇の指導者として、××に関する分析、評価及び部下・後輩への指導を行った。
私は〇〇研究員として、××の研究及びその評価を行った。
課題及び問題点
日常生活では、「課題」と「問題」を区別しないことも多いですが、技術士試験では明確に区別します。
そして、「課題」と「問題」は、平成27年1月に技術士会が公表した「修習技術者のための修習ガイドブックー技術士を目指してー第3版」(p11〜)に記載されています。
問題
あるべき姿(目標・水準)と現状とのギャップ(差異)のこと。
ネガティブな表現で記載します。
試験官に、何が問題であるかを明確に伝えるために、
〜が問題であった。
問題は、〜であった。
〜が困難であった。
などのように記載しましょう。
課題
問題を解決するためにやるべきこと。
試験官に、何が課題であるかを明確に伝えるために、
〜が課題である。
〜が必要であった。
〜が求められた。
課題は〜である。
などのように記載しましょう。
技術者の扱う問題の種類
問題の種類 | 説明 | 具体例 |
---|---|---|
技術上の問題 | ある一定の課題に対して、技術的な解決を求められる問題 | ・製造上の問題 ・製品技術開発における問題 ・品質に関する問題 |
工程上の問題 | プロジェクトマネジメントに関する問題 | ・顧客に約束した納期に間に合わない |
組織の問題 | 組織間のコミュニケーション、業務上の連携に関する問題 | ・組織の連携がうまくいかない ・情報共有ができていない |
リスクマネジメントの問題 | 隠れたリスクが存在し、顕在化したときは組織や個人に大きなハザード(経済的損失、人命の被害)をもたらす | ・内部告発から偽装が発覚した ・災害時に部品供給が停止する |
倫理の問題 | 法令に違反したことが行われている、または、公衆の安全に重大な影響のある設計、施工、生産方法が行われているなど | ・耐震強度を偽装した構造計算を行い建築確認認可を得た |
環境の問題 | 地域の環境、地球の環境の問題など、エンジニアの立場で関わるもの | ・環境に配慮しない設計が行われた ・住民との合意形成がなされていない |
予算上の問題 | プロジェクトの予算には限りがある | ・予算計画の問題 ・資金獲得の問題 |
出典:修習技術者のための修習ガイドブックp12より
技術的解決策
業務経歴の詳細で一番重要な部分です。
なぜ、その解決策を考えたのか、どのように解決したのかを明記しましょう。
口頭試験の試問事項である「コミュニケーション」、「リーダーシップ」、「マネジメント」に該当する箇所になります。
解決策を無意識のうちに考え実行した場合、なぜその解決策を考えたのかが難しく感じる場合があります。
そのようなときは、オズボーンのチェックリストを参考に考えてみましょう。
チェックリスト | 意味 |
---|---|
転用 | ・他の使い道はないか? ・新しい使い道はないか? ・他分野への使い道はないか? |
応用 | ・他分野の手法を適用できないか? ・過去の手法を適用できないか? |
変更 | ・意味、色、動き、音、匂い、様式、用途、型などを変えられないか? |
拡大 | ・大きく、強く、高く、長く、厚くできないか? ・何か追加できないか? |
縮小 | ・小さく、軽く、弱く、短く、省略、分割できないか? |
代用 | ・他のもので代用できないか? ・他のアプローチはないか? |
再配列 | ・順番を変えてみたら? ・アレンジしなおしたら? |
逆転 | ・逆にしてみたら? ・上下、前後を入れ替えたら? ・役割を変えてみたら? |
結合 | ・組み合わせてみたら? ・ブレンドしてみたら? ・アイデアや目的、考えを組み合わせたら? |
例
〇〇に着目したため、××のアイデアを考えた。
〇〇の観点から、××が有効ではないかと考えた。
〇〇の実績から、××が活用できると考えた。
〇〇と考え、次の比較検討をした。
成果
口頭試験の試問事項である「マネジメント」に該当する箇所になります。
問題解決に際し、品質、コスト、納期、生産性、リスク対応、技術的な要求事項の特性を満たすために、どのような成果を得られたのかを、定量的に記述します。
例
品質:耐久性が○年増加した。不良品の発生が○%低減した。新入社員でもミスなく実行できるようになった。
コスト:コストを○%低減した。原価が○%低減できた。
納期:工期が○日間短縮できた。リードタイムが○%短くなった。
生産性:労働時間が○%削減できた。投入人員を○人削減できた。
リスク対応:不良品の発生リスクを○%削減できた。労働災害の発生リスクが○%削減できた。
技術的な要求特性:CO2発生を○%低減しつつ、顧客の要求事項を満たした。
評価
口頭試験の試問事項である「評価」に該当する箇所になります。口頭試験で必ず問われる内容になりました。
過去を振り返っての思いを記載します。反省点などを現段階の視点で記載すればOKです。
例
当時は○○が最適と考えたが、××するとよりコスト(工期)が低減できた。
本提案は○○が達成できたが、××すれば△△も達成可能であった。
今後の展望
こちらも、口頭試験の試問事項である「評価」に該当する箇所になります。評価と今後の展望を1つにまとめてもOKです。
更に発展させればどうなるのか、今後どのような技術革新が期待できるのか、などの視点で記載しましょう。
例
提案時は○○が最適であったが、今後は××という技術が見込めることから、更なる△△が期待できる。
私の提案は、○○という観点から、××という分野にも応用が期待される。
今回の提案は、○○という観点からのみ検証し××という成果を得た。今後は、××という観点からの考察を行うと、△△という成果が得られる。