概要
必須科目の問題構成は、概ね以下のようになっています(技術部門によって傾向が少し異なる場合があります)。
・問題文:遂行するプロジェクトや方策の概要
・(1):プロジェクト等を遂行するにあたり調査・検討すべき事項
・(2):業務を進める手順、留意点、工夫点
・(3):関係者との調整方策
コンピテンシー | 必須科目Ⅰ | 選択科目Ⅱ−1 | 選択科目Ⅱ−2 | 選択科目Ⅲ | 口頭試験 |
専門的学識 | ◯ (基本知識理解) | ◯ (基本知識理解) (基本理解レベル) | ◯ (業務知識理解) (業務理解レベル) | ◯ (基本知識理解) | ー |
問題解決 | ◯ (課題抽出) (方策提起) | ー | ー | ◯ (課題抽出) (方策提起) | ー |
評価 | ◯ (新たなリスク) | ー | ー | ◯ (新たなリスク) | ◯ |
技術者倫理 | ◯ (社会的認識) | ー | ー | ー | ◯ |
マネジメント | ー | ー | ◯ (業務遂行手順) | ー | ◯ |
コミュニケーション | ◯ (的確表現) | ◯ (的確表現) | ◯ (的確表現) | ◯ (的確表現) | ◯ |
リーダーシップ | ー | ー | ◯ (関係者調整) | ー | ◯ |
継続研さん | ー | ー | ー | ー | ◯ |
対策
(1) 調査・検討すべき事項
目安となる記述量
概ね全体の1/3を目安としましょう。
調査・検討すべき事項の書き方
単に調査、検討すべき事項を羅列して記載するだけではNGです。
その調査、検討はなぜ必要なのか、理由を明記しましょう。
理由を明記するには、以下のような構文にすると良いでしょう。
目的を記載するための構文例
・〜〜をするため、〜〜を調査する。
・〜〜を目的に、〜〜を調査する。
・〜〜の検討が必要である。その理由は、〜〜である。
・〜〜の検討を行う。なぜなら、〜〜だからである。
また、以下に、具体的な事例を想定した記載方法を示します。
事例:電気自動車の電磁両立性
添削前
(1)放射ノイズ量の調査
駆動モータ用インバータや昇降圧機器のスイッチング動作による放射ノイズを調査する。
(2)ノイズ耐量調査
車載機器のノイズ耐量を調査する。
(3)機器配置の検討
車載に搭載する機器の配置を検討する。
添削後
(1)放射ノイズ量の調査
放射ノイズは、車載機器の誤作動要因となる。そこでエミッション(EMI)対策を検討するため、駆動モータ用インバータや昇降圧機器のスイッチング動作による放射ノイズを調査する。
(2)ノイズ耐量調査
放射ノイズは完全に除去できない。そこでイミュニティ(EMS)対策を合わせて検討するため、車載機器のノイズ耐量を調査する。
(3)機器配置の検討
各種機器間の配線は、ノイズの放射や侵入経路となる。そこで、配線ルートを最適化するため、車載に搭載する機器の配置を検討する。
調査・検討すべき内容の例
ある程度パターン化できます。実際の試験では、パターン化した内容を問題文のテーマに合わせて内容を具体化すると良いでしょう。
調査・検討すべき内容の例
・品質(Q)
・コスト(C)
・納期、工期(D)
・最新の法令、省令、規則
法令などは知っていることが前提ですが、法改正を見落とすとコンプライアンス違反になります。
そのようなアプローチで記載すると良いでしょう
・最新技術、技術動向、テーマに適した手法、配置方法
・メリット、デメリット
・施工方法、施工性
・軽量化、省エネの手法
・緊急時の対処方法
・機能、性能、故障頻度
・代替製品、代替材料
・市場
・過去の事象
(2) 業務手順
目安となる記述量
概ね全体の1/3(+α)を目安としましょう。
業務手順の書き方
業務を進める手順は、ある程度パターン化できます。過去問や練習問題を通じて、パターン化しておきましょう(2〜5個程度のパターンがあると安心です)。
実際の試験では、パターン化した内容に、問題のテーマを関連付けて記載すればOKです。
手順は章立で記載します。そして、その手順(工程)の目的、具体的な内容を文章で記載します。
パターン化した手順に、設問のテーマに合わせた目的を記載すれば良いでしょう。
※目的を記載しないと、一般論的に見えます。一般論の内容では、他の受験生と差別化できません。
業務手順の例
(1)基本方針の策定、企画及び構想の検討など
(2)基本設計、実施設計、システム設計など
(3)試作品の作成・評価、システム構築・仮運用など
(4)試験、評価、改良など
(5)量産準備、量産開始、システム本運用など
また、各手順に、概要(1行程度)、留意点(2行程度)、工夫点(2〜3行程度)を記載します。
留意点と工夫点のみを記載している論文が多く見られます。が、その手順で何を行うのか説明がないと、読み手に伝わりません。
留意点
「留意」とはどのような意味でしょうか。また、「注意」と何が違うのでしょうか。
実用日本語表現辞典によると、以下のように記載されています。
「留意」とは、「意に留める」こと、「気に留める」こと、「心に留め置く」ことを意味する表現である。
「注意」は「意を注ぐ」と読み下せる表現であり、「気をつける」「気を配る」「心を向ける」という意味合いの見出せる表現である。
よって留意と注意の違いとしては、
・「留意」は「心の片隅に置いておき失われないようにする」といった意味合い
・「注意」は「意識を対象へと傾けておく」といった意味合いである。
実用日本語表現辞典より
つまり、意識を常に対象に傾けておく必要はないけど、心には留めておいてね、といった意味合いになります。
車に注意して横断する、細部に注意を払う、同じ間違いをしないよう注意した、とは言いますが、「留意」とは言いませんよね。
したがって、留意事項として記載する内容は、
・現在は潜在的な問題であるが、将来顕在化する恐れがある事象
・気をつけておかないと、後々失敗を招く事象
を意識して書いてみてください。
また、留意点を記載すべきところ、工夫点を記載している場合が多いです。留意点と工夫点は明確に分けてください。
〇〇に留意する必要がある。だから、〇〇を工夫する。
〇〇に気をつける必要がある。そのため、〇〇を工夫する。
といった構成にしてください。
よくあるNG集を紹介します。以下のNG事例は気づかずに記載している場合もありますので、見直しなどの際に気をつけてみてください。
NG例
①「おいては」、「必要」が連発で記載
○○においては、△△が必要である。また、◎◎においても、☆☆が必要である。さらに、○○においても、△△に留意が必要である。
→何が必要なのか分かりません。必要な項目は1つに絞り、明確にしてください。
②捻じれ文
留意点は、○○に留意することである。
→主語と述語が同じ表現です。「留意点は、〇〇である」の表現にしましょう。
③工夫点を記載してしまう
留意点:〇〇を考慮して〇〇を行う。
→〇〇を行う、としている時点で工夫点です。〇〇を考慮するのはなぜか、その理由が留意点です。
④留意すべき内容になっていない
・「〇〇を効率化すること」に留意する
・「〇〇を低減すること」に留意する
・「〇〇を検討すること」に留意する
・「〇〇を工夫すること」に留意する
これらは、「留意すべき内容」ではなく、どちらかというと「考慮すべき内容」です。
工夫点
業務を進める上で、工夫すべきことを記載します。
単に工夫することだけ記載するのはNGです。なぜそれが工夫点となるのか、読み手(試験官)に伝わらないからです。
なぜそれが工夫点になるのか、なぜその工夫点が必要なのか、が分かるように記載しましょう。
また、留意点と関連付けて記載するようにしてください。
〇〇に留意する必要がある。だから、〇〇を工夫する。
といった流れです。
以下の例を参考に、記載してみてください。
工夫点の記載例
・△△を防ぐために、◎◎を行う。
・通常は◯◯だが、今回は△△のため◎◎とする。
・○○には△△が短所となる。そのため、◎◎を合わせて実施する。
・○○を目的に、◎◎をする。具体的には、△△や☆☆である。
なお、工夫点の記載にも、捻じれ文には注意してください。
(3) 関係者との調整方策
目安となる記述量
概ね全体の1/3を目安としましょう。調査・検討すべき事項、手順よりは少ない記述量でOKです。
関係者との調整方策の書き方
リーダーシップ能力を審査する記述です。
業務を効率的・効果的に進めるために、誰とどのように調整するのかを記載します。
ここでの関係者とは
・自社内の多系統社員
・協力業者
・顧客
・関係機関(国、自治体、公的機関など)
・周辺住民
などが挙げられます。いわゆるステークホルダーですね。
一方、自社の社長・役員、直属の上司、先輩・後輩などは、関係者として登場させないほうが無難でしょう。
確かにこれらの人物とも調整が必要ですが、際立った文章になりません(=当たり前の調整内容となってしまいます)。
多種多様な関係者と様々な利害があるなかで、業務がスムーズに進められるようまとめ上げるのが、リーダーシップです。
関係者を「ステークホルダー」と一括にはしないようにしましょう。具体的に、どのような関係者と調整が必要なのかを記載します。
また、5W1Hを意識してください。5W1Hをすべて記載する必要はありませんが、全く無いと具体性がありません。
5W1H
・When(いつ)
日時、時間、期間、期限など
・Where(どこで)
開催場所など
・Who(誰が)
関係者
・What(何を)
何を調整するか
・Why(目的)
なぜその調整が必要か
・How(どのように)
どのように調整を行うか
関係者との調整方策例
例1
工程遅延を防止するため、〇〇と1ヶ月に1回程度、定例会議を実施する。
ボトルネックとなる工程を把握し、必要により機材や人材を投入する。
これにより、遅延することなく業務を遂行する。
例2
半導体不足により、材料の入手が困難となる可能性がある。
メーカーとコミュニケーションを密にし、半導体の製造状況を把握する。
入手困難に陥りそうな場合は、代替部品も検討する。
例3
周辺住民への理解を得るため、事業計画時に説明会を実施する。
この際、①技術根拠の提示、②定量的な説明、③メリット・デメリットの明記を心がける。
また、一方的な説明に終始せず、対話を通じて理解を得る。