概要
電磁誘導を利用して、交流電力の電圧を変化させる機器のことをいいます。
また、交流電圧の変換以外にも、インピーダンス整合や平衡系ー不平衡系の変換にも利用されます。
種類
構成による種類
内鉄形
鉄心脚の軸が垂直な鉄心の外側に一次巻線、二次巻線などが同心円状に配置された変圧器
鉄心脚をあらかじめ組み立てておき、別に製作しておいた巻線を挿入したあと、ヨーク部を組み立てる。
外鉄形
鉄心脚の軸が水平で、巻線面が垂直な交互配置の変圧器
巻線を垂直にして組み合わせたあと、けい素鋼板を積み込んで鉄心を形成して組み立てる。
絶縁媒体による種類
油
内部絶縁の主体は絶縁油と絶縁紙・プレスボードなどの繊維質絶縁材料である。
一般的に、絶縁油には鉱油が使用される。
絶縁耐力は混入不純物量によって左右される。特に、40ppm以上の水分が混入すると急激に絶縁耐力が低下する。
巻線内の絶縁と冷却のための油道を確保するスペーサには、機械的強度および圧縮特性のよいプレスボードを用いる。
ガス
防災形変圧器として広く使用されている。
油入変圧器の絶縁油を六ふっ化硫黄(SF6)ガスに置き換えたもの。
絶縁耐力と冷却特性には圧力依存性があることから、定格ガス圧力を高めて、絶縁・冷却性能を向上させている。
巻線導体の絶縁材料には、耐熱性に優れたプラスチックフィルム材などが使用されている。
冷却方式による種類
乾式自冷式
巻線・鉄心を大気で直接冷却する方式。
一般的に、小容量器に限って採用される。
空気は油に比べて冷却効果が劣るので、耐熱性の高い絶縁物を使用して温度上昇値を高くとるか、巻線電流密度を比較的低くとる。
乾式風冷式
巻線の下部に冷却ファンを配置して放熱効果を向上させる方式。
油入自冷式
巻線・鉄心の発生熱は対流により油に電圧氏、油の対流によりタンクに伝達し、タンクからの放射と空気の対流により外気に放散させる方式。
タンクの表面積は、ほぼ変圧器容量の平方根に比例するので、容量が大きくなると所要放熱量に対しタンクの表面積が不足する。このため、20kVA程度以上になると、タンクの表面に波形の放熱板を取り付ける。
油入風冷式
油入自冷式の放熱器に冷却ファンで風を吹き付けて放熱効果を向上させたもの。
風冷にすることで放熱器表面の熱伝導率が2〜3倍になるので、所要放熱面積が自冷式の約半分でよくなる。
導油自冷式
パネル形放熱器と本体タンクとの油接続管の途中に送油ポンプを設置し、油を強制循環させ、かつ、タンク内部に仕切りを設け、油流を巻線内の油道に強制的に導き、冷却効率を高める方式。
騒音対策のため本体を防音建屋の中に配置し、冷却器を屋外に配置する場合や、ポンプ停止時の自冷容量を有効に活用する場合などに採用される。
油自然循環の自冷式に比べ、油の上下温度差が小さいため、所要放熱器の数が少なくなる。
導油風冷式
強制風冷式油冷却器を使用し、油および空気を強制循環させる方式。
冷却効率が高く冷却器スペースが小さくなるので、100MVA以上の変圧器に広く採用されている。
導油水冷式
導油風冷式の冷却器を水冷式とした方式。
地下変電所において、冷却水の熱交換器である冷却塔を屋上に設置し、冷却水を再冷して循環使用する密閉式循環方式として採用される。
ガス自冷式
中小容量器に採用されている。
ガス密度が低いため、自然循環における上下温度差が油入変圧器より大きくなる。
ガスを強制循環させるブロワがないので、保守の容易さや騒音の低減が可能である。
導ガス風冷式
大容量器や設置スペースの縮小化が要求される場合に適用される。
SF6ガスは熱容量が小さいため冷却性能の向上を図るためには多量のガスを強制循環させる必要がある。このため、ガス強制循環装置が使用される。
騒音と対策
本体騒音
励磁騒音
鉄心のけい素鋼板の磁気ひずみと鉄心接合部などの積層鋼板間に働く磁気吸引力によって生じる。
磁気ひずみは磁束密度が高くなるほど大きく、素材および鉄心組立時に加わる応力に影響される。
通電騒音
負荷が接続され電流が流れると、漏れ磁束と巻線電流の間に電磁力が作用するので巻線が振動する。
また漏れ磁束の通路に当たるタンク壁や磁気遮へいにも振動が発生する。
これらの振動による騒音を通電騒音という。
冷却器騒音
自冷式放熱器の騒音
本体および油配管からの振動伝達によって発生する。
送油または導油風冷式冷却器の騒音
冷却ファン騒音が主要であり、ほかにポンプ騒音がある。
対策
磁束密度の低減
鉄心の磁束密度を下げるこで励磁騒音は低下する。
一方、鉄心断面積が増え、鉄心や変圧器の重量が増加する。
磁気ひずみの小さいけい素鋼板の採用
結晶の配向性を改善し、皮膜により鋼板に張力を与えた高配向性けい素鋼板を採用する。
鉄心接合方式の改善
接合部では鋼板の継ぎ目を交互にずらす交互積み方式と、継ぎ目位置を順番にずらすステップラップ方式がある。
後者を採用することで、接合部を渡る磁束の集中を緩和して低磁束密度領域で騒音が減少する。
結線方式
Y-Δ結線
Y-Δ結線は変電所の降圧変圧器に、Δ-Y結線は変電所の昇圧変圧器に広く用いられている。
励磁電流の第三調波分を流すΔ回路があるので、中性点を接地すれば異常電圧の発生を低減でき、中性点用負荷時タップ切替器が採用できる。
しかし、一次側・二次側に30°の位相差が生じ、Y側1相地絡では他相の過励磁をもたらすことがある。
Y-Y結線
一次側・二次側を接地でき、位相差も発生しない。
しかし、励磁電流の第三調波分を流すΔ回路がないので、磁束および誘導起電力が正弦波とならず、第三調波分を含むひずみ波形となる。
励磁側の中性点が非接地の場合には、中性点電位が3倍周波数で変動する。
Y-Y-Δ結線
Δ巻線内に励磁電流の第三調波を流れるので、Y-Y結線の欠点が除かれる。
しかし地絡事故が起きた場合、地絡事故電流の1/3がΔ内を循環する。
Δ-Δ結線
励磁電流の第三調波の循環回路があるので、正弦波電圧が誘起され、電圧ひずみがなく、単相器のバンクであれば、1相分が故障してもV結線として使用できる。
しかし、中性点接地ができないため接地保護を行いにくく、三相不均衡負荷や角相の変圧比に差がある場合に流れる循環電流が大きい。
変圧器の劣化要因
変圧器の呼吸作用
油入変圧器は変圧器本体と絶縁油が鋼板製の外箱に入れられ密閉されている。
①外気温の変化、負荷の変動により発熱量が変化
②油や空気が膨張・収縮
③変圧器内部の圧力と大気圧に差が生じ、空気が出入りする
④変圧器内部に湿気が入り絶縁力が低下、絶縁油が酸化し、絶縁油の劣化が進行
変圧器の故障
①変圧器内部で層間短絡や相間短絡が発生
②絶縁破壊や局部的な加熱が生じ、絶縁油が分解
③この時、炭化水素系ガス、不溶性生成分により、絶縁油の劣化が進行
経年劣化
①絶縁油(鉱油)は長期間使用するとそれ自身が分解する
②水分が生成され絶縁油の劣化が進行