概要
直流で送電する方法のことをいいます。
国内外を問わず、電力系統は交流送電が基本となっています。これは直流送電に比べて、変圧が容易で、損失が少ないからです。
しかし、1954年にスウェーデンとゴットランド島の間で本格的に採用されて以来、直流送電の特徴を生かして発展してきています。
交流送電に比べて条数が少なくて済み、建設費が安くなることから、海底ケーブルで積極的に使用されています。
(現在運転中のプロジェクトのうち、約1/3が海底ケーブルに採用されています。)
また、異周波数の連系にも採用されています。
特徴
交流送電と比べた時の直流送電のメリット・デメリットを示します。
メリット
①条数が少なくて済み、建設費が安い
②充電電流の補償問題が発生しない
③短絡容量を増大させることなく異周波数の連系が可能
④高速潮流制御が容易であり、交流系の安定度向上や周波数調整が可能
⑤送電線路のリアクタンス成分やフェランチ効果を考慮する必要がない
デメリット
①送電線の両端に交直変換所やフィルタなどを設置する必要がある
②直流には零点がないため、大容量遮断が困難
③交直変換所の高調波対策が必要
④変圧が困難なため、変圧設備も高価となる
⑤過負荷容量が小さい
方式
単極大地帰路方式
単極構成で帰路回路を大地とする方式。
線路の条数を少なくすることができるため、経済的である。
定格電流が大地に流れるので、パイプラインや地下埋設金属の電食、軌道信号への影響がある。
単極導体帰路方式
帰路電流を導体を介して戻す方式。
大地帰路方式での電食問題や、直流磁界が作る磁気偏差を抑制できる。
また、帰路導線を低絶縁設計とすることで、架空送電線では帰路導線に架空地線としての機能をもたせることができる。
双極大地帰路方式
交流送電の2回線にほぼ相当する方式。
変電所や送電線の片極が故障しても、健全極により単極大地帰路で運転が可能となる。
しかし、双極がアンバランスな電流で運転される場合や、片極停止時の単極運転時には、そのアンバランス分の電流が大地を介して流れる。そのため、単極大地帰路方式と同じような注意が必要である。
双極導体帰路方式
双極大地帰路方式での大地に流れるアンバランス電流や単極運転時の帰路電流対策として、帰路導体を備えた方式。
電食や軌道信号への影響を低減することができるが、初期費用が他の方式と比べて高額となる。
異常現象
交流系統に組み込まれた場合、次のような異常現象が生じる可能性がある。
発電機の軸ねじれ振動現象
発電機軸系の固有の振動が、直流導電の定電流制御系との干渉、相互作用により、持続、継続していく現象。
軸ねじれの振動成分を高速で検出し、変換装置などの制御系の諸定数を適切に選ぶことで相互干渉を回避する。
交流電圧安定性
短絡容量の小さい交流系統に直流系統を連携する場合、直流送電電力の増加により、変換所での消費無効電力が増大し、交流側母線電圧が低下する現象。
逆変換器側で顕著に現れることから、二次側の交流電圧を極力定電圧で運転できるように調整したり、無効電力補償装置などにより交流電圧を一定に維持したりするなどの対策がとられている。
高調波不安定現象
変換所で発生した高調波のうち、フィルタで吸収されない高調波成分は、交流系統のインピーダンスの大きさによって過度に増幅され交流母線電圧のひずみを招く現象。
このひずみが直流電流の高調波を増幅させ、再び交流系統側に作用し、いっそう交流母線電圧をひずませることがある。
変換器パルス間隔一定制御により、高調波発生量を抑制したり、交流系インピーダンスや直流リアクトル定数を調整して相互影響を回避したりするなどの対策がとられている。
参考のURL
・直流送電技術におけるNEDOの取り組み