概要
電気化学反応により、燃料の化学エネルギーから電力を取出す電池のことをいいます。
水素と酸素を化学反応させて、直接電力を作る装置が一般的です。
原理
水の電気分解の逆反応を利用して電力を作ります。
①外部から供給された水素は燃料極で電子と水素イオンに分けられる。
②水素の分解で発生した電子が、外部回路を流れて発電する。
③水素イオンは電解質を通って、空気極で酸素、及び、外部回路から流れてきた電子と結びつき、水に変わる。
燃料電池の種類
燃料電池には、①固体高分子形(PEFC)、②リン酸形(PAFC)、③溶融炭酸塩形(MCFC)、④固体酸化物形(SOFC)などの種類があります。
PEFC | PAFC | MCFC | SOFC | |
電解質 | イオン交換膜 | リン酸 | 炭酸リチウム 炭酸ナトリウム | セラミックス |
燃料 | 水素 | 水素 | 水素 一酸化炭素 | 水素 一酸化炭素 |
作動温度 | 常温〜90℃ | 150〜200℃ | 650〜700℃ | 750℃〜1000℃ |
発電出力 | 〜50KW | 〜100KW | 1〜10万KW | 1〜10万KW |
発電効率 | 〜40% | 〜40% | 〜60% | 〜65% |
開発状況 | 実用化 | 実用化 | 研究開発 | 研究開発 |
用途 | 家庭用 携帯機器用 燃料電池車用 | 工業用 産業用 | 工業用 分散電源用 | 工業用 分散電源用 |
メリット | 作動温度が低い 起動が速い | PEFCより発電効率が良い | 発電効率が良い 白金などの触媒が不要 | 発電効率が良い 白金などの触媒が不要 |
デメリット | 発電効率が低い | PEFCより作動温度が高い | 作動温度が高い 家庭用に不向き | 作動温度が高い 家庭用に不向き |
特徴
①発電の際には水しか排出されない。
②発電と同時に発生する排熱を利用すれば、総合エネルギー効率は80%以上になる(コージェネ)
③化学反応による発電の為、タービンやエンジンは不要で騒音が発生しない。
課題・問題点・解決策
水素製造方法の確率
水素を製造する方法として、①化石燃料からの改質、②電気分解があります。
①は製造過程で二酸化炭素が発生し、②は1㎥の水素を製造するのに5~6kWhの電力が必要となります。
解決策として、①自然エネルギー発電による電気分解(余剰電力の活用)、②太陽光を利用した光触媒による水素製造技術の確立が挙げられます。
水素の安定輸送と貯蔵
水素は体積当たりのエネルギー密度が低く(天然ガスの1/3程度)、高密度を維持しつつ輸送・貯蔵が困難です。
解決策として、高圧ガス化、液化(-253℃)、水素をトルエン等の有機物に化合し、使用時に脱水素を行う方法が挙げられます。
安全性の確保
水素は可燃ガスなので、事故で炎上、爆発する危険があります。
解決策として、事故の際に加速度センサーが衝撃を感知し、バルブを閉じてタンクからの水素供給を停止することが挙げられます。
今後の課題
燃料電池バス
大気汚染問題や地球温暖化の改善等の観点から、利用段階でCO2を排出しない燃料電池をバスに搭載した燃料電池バスの普及
ポータブル燃料電池の実用化
充電が困難な場所でも燃料を入れることで使用が可能。排出ガスがなく、騒音もないため屋内使用に適している。