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(技術士キーワード)永久磁石モータ

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概要

 回転子に永久磁石を取り付けたモータです。

 ネオジウム磁石により高性能を実現し、近年では、電気自動車、エアコン、洗濯機、冷蔵庫など多くの製品に使用されています。

 磁石の受け込み方法によって、次の2種類に分類されます。

 SPMモータ:磁石をロータ表面に組み込む
 IPMモータ:磁石をロータの鉄心内部に埋め込む

構造

回転子

 永久磁石を取り付けた軸と、その周りに配置されたロータコアと呼ばれる薄い鉄板で構成されています。

固定子

 回転子の周りに配置された電磁石で構成されています。

 交流電源から供給される電流により、固定子に電磁場が発生し、回転子が回転します。

ベアリング

 回転子と固定子の軸を支える部品です。

 一般的には、摩擦を抑えるためにボールベアリングが用いられています。

動作原理

 ①固定子に交流電圧を印加し、固定子内に回転磁界を発生させる

 ②回転子に取り付けられた永久磁石の磁力と、回転磁界が相互作用する

 ③これにより、回転子にトルクが発生し回転する

特徴

メリット

高効率

 回転子に永久磁石モータを使用するため、電力損失が少なく高効率化を実現できます。

長寿命

 摩擦が少なく、メンテナンスフリーのため、長期に渡り安定した性能を維持できます。

静音

 モータ内部での摩擦が少ないため、静音性に優れます

デメリット

高価

 永久磁石モータにはレアアースが用いられています。レアアースは、採掘や加工に高度な技術が必要であり、生産コストが高くなります。

 そのため、永久磁石モータ自体のコスト増の要因になります。

 磁石の形状や磁力の配置を最適化することで、レアアースの使用量を減少させつつ、同等の出力を得られるように設計することができます。

回転数の調整が困難

 永久磁石モーターは、回転子に永久磁石が取り付けられているため、磁力の強弱を制御することで回転数を調整することができません。

 そのため、回転数を調整する場合には、制御回路を用いたPWM制御などが必要となり、回路設計が複雑になります。

永久磁石の劣化

 永久磁石は、使用時間や温度の変化によって、磁力が劣化することがあります。

 磁力が劣化すると、モーターの出力が低下するため、寿命が短くなる可能性があります。

 モーターに冷却ファンを設置したり、過熱防止機能を備えた制御装置を使用することにより、劣化を防ぐことが出来ます。

用途

 永久磁石モータは数多くの分野で使用されています。ここでは、一例を示します。

自動車

 ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両において、永久磁石モーターが主に使用されています。

 モーターの小型化・軽量化が求められる自動車業界では、高出力で効率の良い永久磁石モーターが欠かせない要素となっています。

家電製品

 家庭用の電気掃除機や冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電製品にも、永久磁石モーターが使用されています。

 特に、省エネルギーを実現するために、モーターの高効率化が求められる場合には、永久磁石モーターが有効です。

工業用機械

 工業用機械にも、永久磁石モーターが使用されています。

 例えば、プリンター、製造ラインのコンベア、ポンプなどが挙げられます。

 工業用機械の場合にも、高効率で高出力なモーターが求められるため、永久磁石モーターが選択されます。

電動工具

 電動ドリル、電動ドライバー、電動グラインダーなどの電動工具にも、永久磁石モーターが使用されています。

 高出力かつコンパクトなモーターが必要であり、高効率な制御が求められます。

参考資料

知っておきたいPMモータ(日本電機工業会)




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