概要
発変電所や送電線を含めた電力系統全体の絶縁について合理的な強調を図り、安全で、かつ、経済的な絶縁設計を行うことをいいます。
絶縁協調の具体的な数値は定められていませんが、次のような考えで行われています。
①避雷器の保護能力を十分に生かす
②系統形成並びに遮断器や制御・保護装置などの改善により異常電圧の抑制を図る
③機器・設備の使用状況を把握して絶縁事故の確率を許容水準にとどめるよう設備全体の総合的・合理的なバランスをとる
④上記を検証するため合理的な試験を実施する
考慮すべき過電圧
雷サージ
波頭長が数μs程度と短いものの、過電圧値は最も大きく、変電機器の絶縁設計を決める最も重要な因子です。
雷サージの大きさは電撃箇所により大きく変わり
①変電所に近い場所への電撃と遠い場所への電撃
②架空地線(鉄塔)へ電撃した場合
③電力線へ電撃した場合
に分類できます。このうち、最も過酷と考えられるのは、変電所近傍からの電撃です。
開閉サージ
送電線開閉時のサージや地絡事故時のサージなど、一般的に波頭長が数十μs程度のサージ性過電圧です。
開閉サージには、
①無負荷線路投入時および再投入サージ
②進み小電流遮断サージ
③遅れ小電流遮断サージ
があります。ただし、進み小電流遮断サージ、投入サージは問題となることはほとんどありません。
交流過電圧
地絡事故や負荷遮断など系統事故に伴う商用周波数領域の過電圧です。
一線地絡時の交流過電圧の大きさは、500kV系統、275kV系統ともに過電圧倍数1.25倍以下を用いれば良いとされています。
断路器サージ
断路器開閉の際、極間の再点弧により発生し、数MHzの高い振動性サージです。
再点弧アークが存在するところに過電圧が印加されるので地絡を誘発しやすくなります。
また、断路器は操作頻度が高く、開閉時に多数回の再点弧を繰り返すため、過大な断路器サージは電撃や遮断器の故障遮断に比べて高確率で発生します。
手法
気中絶縁変電所
主な被保護機器である変圧器近傍に避雷器を設置することで、母線全体を保護します。
避雷器と被保護機器との離隔距離は、50m以内となるように、設置台数、設置位置を考慮します。
GIS変電所
避雷器の設置位置は、GISの絶縁特性および線路側機器との協調を勘案したうえで、変圧器付近、母線付近、線路引込口、または、それらの組み合わせにより決定します。
一般的には、線路引込口に設置すれば全体として保護を図れます。しかし、母線の広がりが大きい場合には、線路引込口と合わせて変圧器端子に避雷器を設置します。
また、ガス絶縁母線と変圧器の間にケーブルが介在する場合には、母線端子のみに避雷器を設置する場合もあります。
送電線
送電線の耐雷設計として最も一般的に行われているのは,電力線に直撃雷が侵入しないように送電線を遮へいする架空地線の布設です。
500kV送電線では,
①架空地線を一般的に 2 条布設
②架空地線を電力線より外側に布設し負の遮へい角とし、下位電圧よりフラッシオーバを減らす
などにより送電線事故を減少させています。