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(技術士キーワード)有機ELディスプレイ

2024年2月10日

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概要

 有機ELを用いたディスプレイのことをいいます。

 液晶型ディスプレイに比べて、薄型が容易で、消費電力、視野角、応答速度などが優れており、次世代ディスプレイとして注目されています。

構成

 ①発光層(有機層)
  RGBの三原色を配置。有機層の厚みは数百nm程度である。
  高分子型(ポリマー型)の有機材料が使用される。

 ②電極
  電源のON、OFFや電圧を変化させることで、有機層の発光をコントロールする。
  陽極にはITO(酸化インジウムスズ)、陰極にはアルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物が使用される。

 ③基板
  有機層と電極を挟むように配置する。
  ポリイミドやPETが使用される。

特徴

 液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイの特徴は以下の通り。

液晶ディスプレイプラズマディスプレイ有機ELディスプレイ
消費電力◯(100〜200W)✗(400〜500W)◎(理論上)
◯(現状:300〜400W)
寿命◯(6万時間)◎(10万時間)✗(1.5〜3万時間)
価格
薄型化◯(バックライトの小型化)△(放熱スペースが必要)
応答速度△(1〜10ms)
視野角

課題・問題点

長寿命化

問題点

 有機分子は酸素や湿気に弱いため、液晶ディスプレイに比べて約半分の寿命になる。

解決策

 基底状態よりも励起状態にあるときに、水素や水分と反応して劣化する確率が高い。そのため、励起状態を短時間にする。

 具体的には、りん光発光材料をドーピングすることで、励起状態の時間を短くすることができる(100ns〜100μs程度)

コスト低減

問題点

 有機ELは蒸着方式が主流である。蒸着方式は、
  ①真空環境で材料を加熱
  ②気化させてEL層を形成
する必要がある。そのため、プロセス環境を真空にするための設備が必要で、RGB膜を3回に分けてそれぞれ決められた場所に形成させるため、マスキング回数も増加する。

解決策

 印刷方式による製造を導入する。

 具体的には、材料を大気中で印刷し、EL層を形成する。

 真空環境やマスキングが不要なため、設備投資が少なくメンテナンス性も向上する。また、必要な箇所のみを必要な分量だけ塗布するため、材料のロスも少なくなる。




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