筆記試験の対策

 このページでは、筆記試験の対策として、

 ①文章作法(全部門対象)

 ②キーワード学習(全部門対象)

 ③答案用紙の構成

 設問に対するポイント

 ⑤骨子の作成と時間配分

 ⑥過去問のテーマ

を案内します。

文章作法

 文章作法と、次に案内する「キーワード学習」は同時に勉強していきましょう。

常体(「〜である」調)で記述する

 文章には、敬体の「ですます」調と、常体の「である」調があります。技術士論文では、「である」調で記述するようにしてください。

まちがっても、「ですます」調と「である」調は混在させないでください。

理由①

 文章を断定的に言い切ることで、強い印象と説得力のある文章になります。

理由②

 文字数を削減することができ、より多くの情報を記述することができます。

句点

 「。」のことを言います。文章の終わりに必ず記述します。

 また、よくある間違いですが、句点は箇条書き、題目には記述してはいけません。

 さらに、( )書きで終わる場合、( )書きの外に句点を記載します。


 〜である(〇〇を含む)。

 1マス1文字が基本ですが、行の先頭に句点がきてはいけません。

読点

 「、」のことを言います。主語を明確にするために記述します。

 また、接続詞、副詞条件の後ろには必ず記述します。


 しかし、○○と考えられる。
 したがって、○○となる。
 〇〇と仮定すると、××が得られる。

 1マス1文字が基本ですが、行の先頭に読点がきてはいけません。

かぎかっこ

 語句を目立たせたい場合、注意を引くために使用します。


 今後の日本は、さらに「人材不足・後継者不足」が進むであろう。
 これを解決するには、「スマートグリッド」を導入することが必要不可欠である。

ひらがな書き

 技術論文では、品詞によって漢字・ひらがなの使い分けが一般的です。

 以下では、ひらがな書きにする例を記載します。

副詞

 動詞、形容詞、形容動詞を修飾する語。

ひらがな表記(漢字表記)
いまだに(未だに)いまだに解決することが困難である。
さまざま(様々)さまざまな問題が複合している。
きわめて(極めて)きわめて重要な問題である。
ともに(共に)A・Bともに解決できる。
わずか(僅か)わずかに異なる。

接続詞

 前後の文や語句の関係を示す語。

ひらがな表記(漢字表記)
あるいは(或いは)AあるいはB
および(及び)AおよびB
または(又は)AまたはB
かつ(且つ)AかつB
したがって(従って)したがって、〇〇と考える。
さらに(更に)さらに、〇〇が考えられる。
ゆえに(故に)ゆえに、○○となる。

形容詞・形容動詞

 物事の状態や性質が「どのようであるか」を表現する語。

ひらがな表記(漢字表記)
さまざま(様々)さまざまな方法
しがたい(し難い)解決しがたい問題
やさしい(易しい)やさしい問題
よい(良い)よい結果
してよい(して良い)○○してよい

一文一意

 一文一意とは、一つの文章で一つの意味をもたせることを言います。

 文章が長いと、主張したいことがわからず、支離滅裂な表現になってしまいます。

 技術論文を書くときは、一文一意を意識しましょう。

 文章が長くなるときは、適切な接続語を設けて文章を分割します。

添削前
 本件名の課題は〇〇で、私は△△が問題だと考えたので××を提案し、◎%のコスト低減ができた。
 →一文四意(一つの文章で4つの意味)

添削後
 本件名の課題は○○である。私は、△△が問題であると考えた。そこで、××を提案した。その結果、◎%のコスト低減ができた。

その他NG集

 話し言葉、表現の不統一、長い文言など、NG集の一例を紹介します。

 特に話し言葉は、ここで紹介した以外にも多数ありますので、十分に注意してください。

技術論文のNG集

・〜においては
添削前
 工場においては、CO2の削減が求められる。
添削後
 工場では、CO2の削減が求められる。

・〜〜が考えられる。
添削前
 〇〇の解決には、☆☆の技術を適用することが考えられる
添削後
 〇〇の解決には、☆☆の技術を適用する。 

・話し言葉①
添削前
 調べ方が甘く、曖昧な点が多い。
添削後
 調べ方が不十分で、曖昧な点が多い。

・話し言葉②
添削前
 問題が発生した原因は不明である。なので、関係者に聞き取り調査を行った。
添削後
 問題が発生した原因は不明である。そこで、関係者に聞き取り調査を行った。

・話し言葉③
添削前
 〇〇が一番多い。
添削後
 〇〇が最も多い。

・話し言葉④
添削前
 はじめに〇〇を行う。それから、☆☆を行う。
添削後
 まず、〇〇を行う。次に、☆☆を行う。

・話し言葉⑤
添削前
 〇〇である。言い換えると、☆☆である。
添削後
 〇〇である。すなわち、☆☆である。
※ただし、技術士論文では言い換え表現はおすすめしません。文字数制限が限られている中で、同じことを2度繰り返し表現するからです。

・話し言葉⑥
添削前
 〇〇技術は、他社にも展開できるので推進する。
添削後
 〇〇技術は、他社にも展開できるため推進する。

・表現の不統一
添削前
 1.CO2削減の拡大
  〜〜である。そのため、〜〜が求められている。
 (中略)
 2.省エネの推進
  〜〜である。このため、〜〜が求められている。
添削後
 1.CO2削減の拡大
  〜〜である。そのため、〜〜が求められている。
 (中略)
 2.省エネの推進
  〜〜である。そのため、〜〜が求められている。

・長い表現
添削前
 〇〇を向上していくことが重要である。
添削後
 〇〇を向上することが重要である。

役立つ表現集

 論文を記述するにあたり、役立つ表現集をまとめます。※逐次追加します。

・並列な文の番号付け
 自動運転技術は、位置特定技術、障害物認識技術、通信技術で構成される。
(ミニ解説)
 複数の並列した事象を記載すると、どうしても文章が長くなってしまう。
 ①、②、③と番号を付与することで、長文になっても読みやすい文章となる。

・具体的には
 〜〜の方針を行う。
 具体的には、〇〇技術と〇〇技術を融合させる。・・・・・
(ミニ解説)
 「ここからが具体的な手法ですよ」と試験官にアピールする。

・そのため
 〜〜が現状である。そのため、〜〜が問題である。
(ミニ解説)
 前後の文章の論理関係が明確になる。

・さらに
 〜〜が達成可能である。さらに、〇〇にも適用が可能となる。
(ミニ解説)
 単なる目標(課題)達成だけではなく、他にも波及効果があることをアピールできる。
 ただし、文字数の観点から、乱用は良くない。

キーワード学習

 キーワード学習は、筆記試験全般の対策になります。

 キーワード学習のやり方、キーワードの抽出方法などを解説します。

キーワード学習とは?

 キーワード学習とは、過去問、最近のトピックス、白書などからキーワードとなるような語句を抽出し、そのキーワードについて、
 ①概要
 ②原理・構成
 ③特徴(メリット・デメリット)
 ④課題
 ⑤問題点
 ⑥解決策
 ⑦応用例
 ⑧今後の展望
などをA4用紙1枚にまとめる学習方法を言います。

 抽出するキーワード数は、部門によって異なりますが、100〜300個程度を目安にするといいでしょう。
 (著者の場合、電気電子部門の電気応用で受験しましたが、最終的に101個のキーワードを作成しました)

 最初に述べた文章作法と、キーワード学習を組み合わせて、筆記試験の対策を行うと効率的です。

キーワード学習のメリット

 ①概要、②原理・構成、③特徴はⅡ−1Ⅱ−2の対策になります。

 ④課題、⑤問題点、⑥解決策、⑦応用例、⑧今後の展望は、の対策になります。

 つまり、キーワード学習で、全問題の対策を一度に行うことができます。

キーワードの抽出方法

 Ⅰの問題は、日本が抱える課題を問題のテーマにしており、技術部門の目線で解答することが求められています。
 (例えば、地球温暖化、技術者不足、自然災害、Society5.0、SDGsなど。一部例外もあり)

 一方、Ⅱ、Ⅲの問題は、技術部門が抱える課題を問題のテーマにしており、技術部門(専門分野)の目線で解答することが求められています。
 (電気電子部門の場合、例えば、自動運転技術、設備の老朽更新、再生可能エネルギーなど。一部例外もあり)

 まず、Ⅰの問題からキーワードを抽出してみましょう。サンプルとして、令和4年度の電気電子部門の過去問からキーワードを抽出してみます。

令和4年度の電気電子部門の過去問(必須科目)はこちら

キーワード

 技術者不足、遠隔医療


 次に、Ⅱ、Ⅲの問題からキーワードを抽出してみましょう。サンプルとして、令和4年度の電気電子部門(電気応用)の過去問からキーワードを抽出してみます。

令和4年度の電気応用の過去問はこちら

キーワード

Ⅱ−1の問題より

 電磁調理器、飛行時間計測、LiDAR、熱電効果、パワーエレクトロニクス、フィルムコンデンサ、アルミ電解コンデンサ

Ⅱ−2の問題より

 列車の無人運転、逆走防止システム、受配電設備、密閉型開閉装置、絶縁支持碍子

Ⅲの問題より

 大型誘導電動機、ITS(高度道路交通システム)、自動車の運転支援システム

キーワード学習のサンプル

 著者が受験時に作成したキーワード集のサンプルです。

 題材は電力線通信とLRT。テーマによって書けいない箇所もありますが、そのような場合は空白でOKです。

 また、図表などは手書きでも描けるよう、シンプルなものにしましょう。

キーワード(電力線通信)のサンプルはこちら

キーワード(LRT)のサンプルはこちら

キーワード一覧

必須科目キーワード

 技術士試験の必須科目では、現代社会が抱えている様々な問題がテーマとして出題されます。

 ここでは、現代社会に関連するキーワード一覧を公開します。

 どのテーマが出題されても、概要をイメージできるようにしておきましょう。

必須科目全般のキーワードはこちら

部門別キーワード

 表のリンク先がある部門は、キーワード一覧を公開している部門です。

 建設部門は、受験生が非常に多いので、世の中には私より良いキーワードを選定しているものが多いです。そのため、キーワード集に関係する書籍を紹介しています。
 総合技術監理部門は、技術士会が公表する総監キーワードの最新版をリンク先としています。

 なお、著者は電気電子部門の技術士です。
 他部門を受験される方は、記載されている内容以外にもキーワードになり得るかもしれません。
 ご自身で過去問分析などをしてキーワード抽出をしてください。

機械部門船舶・海洋部門航空・宇宙部門
電気電子部門化学部門繊維部門
金属部門資源工学部門建設部門
上下水道部門衛生工学部門農業部門
森林部門水産部門経営工学部門
情報工学部門応用理学部門生物工学部門
環境部門原子力・放射線部門総合技術監理部門
部門一覧

答案用紙の構成

 電気電子部門を例に、答案用紙の構成について説明します。

共通事項

 設問ごとに章立てを行います。

 章立てには下線部を引くと見やすくなります。
 (章立てには0.9mmのシャーペンで記載すると良い、というアドバイスも見かけますが、著者はどちらでも良いかと思います)

 設問に過不足なく答えることが重要です。
 たとえば、課題を3つ抽出し、とあれば、記載する課題は3つです。2つや4つはNGです。

 また、各科目で問われている内容(合格基準)を意識しましょう。各科目で問われているコンピテンシーは異なります。

必須科目

構成例

必須科目の論文の構成はこちら


ポイント

必須科目(Ⅰ)のポイント

・設問ごとに章立てを行い、問われている内容を小見出しとして記述する

・課題の観点は、問題文に記載されているか否かを問わず、記載する
 幅広い観点から抽出していることを試験官にアピールする

・観点の指定がない場合は、人、モノ、金、情報、安全などを観点にすると良い


選択科目

構成例(電力・エネルギーシステム)

電力・エネルギーシステムの論文の構成はこちら

構成例(電気応用)

電気応用の論文の構成はこちら

構成例(電子応用)

電子応用の論文の構成はこちら

構成例(情報通信)

情報通信の論文の構成はこちら

構成例(電気設備)

電気設備の論文の構成はこちら


ポイント

選択科目(Ⅱ-1)のポイント

・Ⅱ-1では、問われている内容ごとに章立てを行う(一部例外あり)

・原理、現象などは図を、特徴は表を併用する

・特徴、留意事項などは、何と比較しての特徴なのかを記載する

選択科目(Ⅱ-2)のポイント

・問われている内容ごとに章立てする

・調査、検討する事項は3つ程度記載する(幅広い観点で)
 人、モノ、金、情報、安全などを観点にすると良い

・手順が多くなる場合は、特に留意と工夫が必要な手順を3つ程度記載する
 他の手順は、簡潔に記載する
 なお、手順は図を併用すると流れがわかりやすい

・調整方策は2つ程度記載する(幅広い関係者と調整する)
 自社、関連会社、多系統、顧客など

選択科目(Ⅲ)のポイント

・設問ごとに章立てを行う

・課題は、幅広い観点からは記述する
 人、モノ、金、情報、安全などを観点にすると良い

・複数の解決策は、3つ程度記載する

設問に対するポイント

必須科目

コンピテンシー必須科目Ⅰ選択科目Ⅱ−1選択科目Ⅱ−2選択科目Ⅲ口頭試験
専門的学識
(基本知識理解)

(基本知識理解)
(基本理解レベル)

(業務知識理解)
(業務理解レベル)

(基本知識理解)
問題解決
(課題抽出)
(方策提起)

(課題抽出)
(方策提起)
評価
(新たなリスク)

(新たなリスク)
技術者倫理
(社会的認識)
マネジメント
(業務遂行手順)
コミュニケーション
(的確表現)

(的確表現)

(的確表現)

(的確表現)
リーダーシップ
(関係者調整)
継続研さん
試験科目別確認項目

多面的な観点

 多面的な観点からの課題の抽出は、複数の異なる側面から問題点を分析し、課題を抽出することになります。

 このとき、多面的な観点として、「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」、「ルール」、「基準」、「時間」、「場所」、「環境」、「安全」などに着目して記載すると良いでしょう。

 ヒト:技術者(従業員)及び会社(組織)の知識、経験、ノウハウ、男女比、外国人労働者、利便性向上など

 モノ:設備の状況(新しい設備か古い設備か)、老朽取替の可否、稼働率、故障率など

 カネ:費用の発生、ランニングコスト、イニシャルコスト、既存と比べてコスト増かコスト減かなど

 情報:関係法令の改定(及び共有)、情報共有の方法、セキュリティ、テレワーク・在宅勤務など

 ルール:既存のルールでの対応可否、関連法令遵守のコンプライアンスなど

 基準:基準の見直しの可否、基準の適用など

 時間:納期(特に海外情勢による影響)、ボトルネックとなる工程など

 場所:景観に考慮すべき場所、塩害を受けやすい場所、自然災害(大雪、雷、台風、地震など)の発生しやすい場所など

 環境:自然環境に与える影響、環境法令の遵守、職場の環境整備、騒音、振動など

 安全:高所作業・危険作業の有無、技術者(従業員)の健康管理など


課題

 単に課題を列挙するだけでは、説得力に欠けます。なぜそれが課題になるのかを明記しましょう。

 そのためには、
  ①現状はどうなっているのか
  ②問題点は何か
  ③だから課題をどうするか
 といった流れで考えると良いでしょう。

<課題の書き方>
 ①課題を小見出しで記載する(観点も合わせて記載する)
 ②現状を記載する
 ③問題点を記載する
 ④課題(やるべきこと、達成すべきこと)を記載する

事例:地方都市への電気自動車の普及・拡大に伴う課題

添削前
(1)充電スタンドの普及
 電気自動車の普及には、充電スタンドの普及が課題である。

添削後
(1)充電スタンドの普及(観点:利便性)
 現状:2021年現在、都内では1km2あたり1基以上の充電スタンドが整備されている。一方、北海道や東北などの地域では、都内の100分の1以下の設置数である。
 問題点:充電1回あたりの走行距離は年々増加している。しかし、充電スタンドの少なさは、充電切れへの不安心理からEV普及の足かせとなる。
 課題:したがって、EVの普及拡大には、充電スタンドの設置数増加が必要不可欠である。

<問題点と課題の違い>
 多くの受験生は、「問題点」と「課題」を同じ概念で考えています。しかし、技術士試験では、「問題点」と「課題」は異なる概念として記述します。

・問題点
 あるべき姿(目標・水準)と現状とのギャップ(差異)
・課題(課題設定)
 問題点を解決するために為すべきことを設定

修習技術者のための修習ガイドブック-技術士をめざして-第3版 p11より(一部改変)

 したがって、問題点はネガティブな表現課題はポジティブな表現で記載することになります。
 また、問題点の言い換えを課題で記載するのは、おすすめしません。具体例は、以下のNG事例集(事例3)を参照ください。

<技術者の扱う問題の種類>
 「修習技術者のための修習ガイドブック」によれば、技術者の扱う問題の種類は、以下のように整理されています。
 一部は、倫理、社会の持続可能性、関係者との調整方策の内容も混ざっていますが、参考になるかと思います。

問題の種類説明具体例
技術上の問題ある一定の課題に対して、技術的な解決を求められる問題・製造上の問題
・製品技術開発における問題
・品質に関する問題
工程上の問題プロジェクトマネジメントに関する問題・顧客に約束した納期に間に合わない
組織の問題組織間のコミュニケーション、業務上の連携に関する問題・組織の連携がうまくいかない
・情報共有ができていない
リスクマネジメントの問題隠れたリスクが存在し、顕在化したときは組織や個人に大きなハザード(経済的損失、人命の被害)をもたらす・内部告発から偽装が発覚した
・災害時に部品供給が停止する
倫理上の問題法令に違反したことが行われている、または、公衆の安全に重大な影響のある設計、施工、生産方法が行われているなど・耐震強度を偽装した構造計算を行い建築確認許可を得た
環境の問題地球の環境、地球の環境の問題など、エンジニアの立場で関わるもの・環境に配慮しない設計が行われていた
・住民との合意形成がなされていない
予算上の問題プロジェクトの予算には限りがある・予算計画の問題
・資金獲得の問題
技術者の扱う問題
修習技術者のための修習ガイドブック-技術士をめざして-第3版 p12より

よくあるNG事例集
 課題の記述について、NG例を紹介します。

事例1:必要性の連呼
 〇〇の実現のためには、△△が必要である。また、〇〇のため、△△も必要である。更に、〇〇を行う必要もある。したがって、☆☆が課題である。

必要性を連呼することで、焦点がボケてきます(本当に必要なものがどれか分かりません)。「必要性」を記載する場合は、1つの課題に1つまでとしましょう。

事例2:現状・問題点・課題の不一致
 現状:少子高齢化により、生産年齢人口が〇年前に比べて△%減少している。
 問題点:円安や物価高のため製品開発にコストがかかる
 課題:省エネ技術導入によるコスト低減

現状は少子高齢化による生産年齢人口の話題を記載しているにも関わらず、問題点では円安等によるコスト上昇となっています。
現状・問題点・課題は一致させるよう記述しましょう。

事例3:問題点と課題
 問題点:〇〇のコスト上昇が問題となる。
 課題:したがって、〇〇のコスト低減が課題である。

コスト上昇はネガティブ表現、コスト低減はポジティブ表現になっています。しかし、課題は問題点の言い換えに過ぎません。
問題点、あるいは、課題の表現を変更するようにしましょう。


最も重要と考える課題

 (2)では、「(1)で抽出した課題の中から最も重要と考える課題」と「解決策」を記述します。

 まず、最も重要と考える課題を選ぶときに、その理由も必ず記述しましょう。

添削前
 私は、〇〇の課題が最も重要であると考える。

と記述すると、試験官(採点者)によっては、「いやいや、△△の課題のほうが重要じゃない?」と思われてしまう可能性があります。

添削後
 私は、☆☆の理由から、〇〇の課題が最も重要であると考える。

と記述をしましょう。理由の有り無しで、論文のイメージが大きく異なります。他の受験者との差別化にも繋がります。


解決策

 単に解決策のみを記載するだけでは、説得力に欠けます。そのため、以下のいずれかの方針で記載するようにしましょう。

<解決策の書き方①>
 ①解決策の発想にいたった着眼点
 ②解決策の具体的な方法・手法
 ③解決策が達成できた場合の成果

<解決策の書き方①の具体例>
添削前
(1)IoT機器の導入
  カメラやセンサーを活用して、IoT機器の導入を図る。

添削後
(1)IoT機器の導入
 現在は、人力作業が大半である。そこで、人力作業の自動化に着目し、IoT機器の導入を行う。
 具体的には、〜〜〜(具体的な解決方法)
 その結果、人力作業のうち30%が自動化され、生産性向上へとつながる。

<解決策の書き方②>
 ①解決策の方針・方向性
 ②解決策の具体的な方法・手法
 ③解決策を達成できた場合の成果

<解決策の書き方②の具体例>
添削前
(1)IoT機器の導入
  カメラやセンサーを活用して、IoT機器の導入を図る。

添削後
(1)IoT機器の導入
 〇〇の課題を達成するため、カメラやセンサーを活用して、IoT機器の導入を図る。
 具体的には、〜〜〜(具体的な解決方法)
 その結果、〇〇の課題が達成できる。

<着眼点や方針の書き方>
 着眼点や方針は、次に述べる解決策の前段として記載します。どのような技術を用いるのか、なぜその技術が有効なのかを意識しながら、1〜2行程度で記載しましょう。
 ・〇〇に着目し、☆☆技術を導入する。
 ・〇〇の課題を達成するため、☆☆技術の導入を図る。
 ・〇〇のため、☆☆技術を導入すれば△△が得られると考える。
 ・一般的には〇〇を導入するが、本件は△△のため、☆☆を導入する。

<解決策の具体的な方法の書き方> 
 ここでは、一般的な技術の説明に終始してはいけません。
 世の中にある技術を、問題文(あるいは設定した課題)のテーマに合わせてどのように活用するのか、具体的に記載します。
 ここから解決策ですよ、と示すために、文頭に「具体的には、」などの表現を使うと、読みやすい文章になります。ただし、「例えば、」などの表現は、他人事に見えてしまいますので避けましょう。
 解決策は、テーマに合わせて様々に記載できます。そのため、添削などを通じて自分のものにしていきましょう。

<解決策に役立つ技術>
 電気電子部門がメインですが、幅広い解決策に使えそうな技術例を紹介します。
 ※内容は随時見直しを行います。
 ・人工知能(AI)
 ・スマートシティ化、スマート農業などのような「スマート〇〇」
 ・自社敷地内(工場内)への再エネ導入
 ・各種IoTデバイスの導入
 ・クラウド化

<成果の書き方>
 最後に、解決策を達成できた場合の成果を記述しましょう。設問に「成果(効果)を述べよ」と記載がなくても、成果は述べるようにします。
 成果も本題ではありませんので、1〜2行程度で記載します。
 ただし、解決策は課題を達成するために行うものです。そのため、課題と無関係な成果では意味がありません。課題、解決策、成果が矛盾の無いよう記載しましょう。
 なお、部門によっては、(3)で成果を記述する場合があります。その場合は、(3)で記述するようにしましょう。

<ポイント>
 解決策の具体的手法を記載するのに、インターネットで調べた技術や世の中話題になっている技術を書く方が多いと思います。
 間違った方法ではありませんが、まずはご自身の専門技術が応用できないか考えてみてください。
 ご自身の専門技術は、誰にも負けないはずです。したがって、具体性・技術力・成果などに説得力が増すはずです。

<オズボーンのチェックリスト>
 解決策の観点に困ったら、オズボーンのチェックリストを参考にアイディアを考えてみてください。

ポイント意味応用
転用他の使い道を考える多分野に適用してみる
応用似たものを考える同じ手法を適用できないか
変更一部を変えてみる色・音・大きさ・用途の変更
拡大大きく、長くしてみる時間、態度、強度、価値、数量
縮小小さく、短くしてみる時間、態度、強度、価値、数量
代用代わりになるものがあるか人、物、材料、製法、場所
再配列並べ変えをしてみる場所を変える、順序変更
逆転逆にしてみる反対にする、役割を変える
結合組合せてみる合体、ブレンド
オズボーンのチェックリスト
修習技術者のための修習ガイドブック-技術士をめざして-第3版 p13より

リスク

 「リスク」とは、現在は顕在化していないが仮に顕在化すると、解決策が無意味になる重大な悪影響で、かつ、不確実な事象の事を言います。

 多くの受験生は、技術上のデメリットなどを記載します。しかし、確実に発生する事象や技術上のデメリットは、事前に検討するべき内容です。したがって、それはリスクではなく「問題点」に該当します。

 リスクは、第三者の影響によるものをメインに考えましょう。

 また、リスク = 被害規模 × 発生確率で表現することも出来ます。そのため、リスク対策では、
  ①被害規模を低減させる対策
  ②発生確率を低減させる対策
を記載すれば良いでしょう。

 さらに、リスクに対する手段として、次の4パターンが考えられます。
  ①リスク低減:リスクを受容できるまで被害規模や発生確率を低減させる
  ②リスク回避:低減策が不経済や困難な場合は、リスクを伴う活動自体を中止する
  ③リスク移転:保険等に加入し、リスク発生時には第三者から損失補填を受ける
  ④リスク保有:顕在化しても悪影響は軽微のため、対策は講じない
 技術士試験の答案では、①リスク低減を中心に記載しましょう。リスクは完全にゼロにすることは出来ません。リスクを許容できるまで低減できれば、あとはリスク保有も視野に入れましょう。

具体的なリスク事例
 ・不良品の発生
 ・工期遅延
 ・労災、公衆災害の発生
 ・大規模自然災害
 ・機械、設備、AI、ICT等の故障、誤作動
 ・海外情勢の不安定によるコスト増
 ・情報漏えい
 ・サイバー攻撃
 ・通信障害

解決策に関連したリスク
 技術士試験では、「解決策を実行しても新たに生じるリスク」、「解決策に関連したリスク」など、解決策と結びつけて記載する必要があります。
 大規模な自然災害や新たな感染症拡大、サイバー攻撃は、リスクではありますが、解決策に関連して記載するようにしましょう。
例1(サイバー攻撃)
 解決策は、これまで以上にオンライン接続される。そのため、サイバー攻撃のリスクが大幅に増加する。具体的には、〇〇などの攻撃が想定される。
例2(通信障害)
 解決策は、既存のキャリア回線を用いる。そのため、通信障害が発生すると、〇〇が達成できない。実際、〇〇年や〇〇年には大規模通信障害が発生した。

 また、修習技術者のための修習ガイドブックにもリスクと対策の例が記載されていますので、参考にしてみてください。
 ただし、環境の欄に記載のある「補助金」の記載は避けたほうが良いでしょう。実務では補助金申請などあると思います。しかし、技術士試験は「技術的観点」の記載が必要なためです。

側面リスク主な対策と技術
社会食糧危機、生物絶滅、資源枯渇食糧生産効率化、再生可能エネルギー
文化テロ、世界戦争、貧困、伝染病蔓延平和維持活動、紛争防止、多様な価値観
環境地球温暖化、環境破壊、自然災害持続可能社会、生物多様性、環境保護、資源管理、補助金
技術設計ミス、想定外利用、事故フェールセーフ、安全設計、標準化
リスクと対策の例
修習技術者のための修習ガイドブック-技術士をめざして-第3版 p21より

 なお、多くの受験生は、リスクに「サイバー攻撃」を記載します。そうすると、他の受験生と差が開きませんので、
  ・サイバー攻撃のリスクは、より深く調べておく
  ・練習段階では、できるだけ様々なリスクを記載できるようにしておく
ことをおすすめします。

参考:リスクとデメリットの判断基準

<リスク>
 ・第三者が原因となり引き起こる事象
  ・・・サイバー攻撃、自然災害、通信障害など
 ・通常の想定では発生しない事象(想定外の原因により発生する)
  ・・・初めての使用・不慣れな人の使用・方法変更などにより生じるミスなど
 ・自分自身でコントロールできない事象
  ・・・通信障害、海外情勢の影響など
 ・発生頻度は少ないが、発生すると悪影響が大きい事象
  ・・・特定条件下での不良品の大量発生、人員変更に伴う労災・公衆災害の一時的増加など
  ※発生頻度は少ない、かつ、発生しても悪影響が小さい事象は、リスクとしては不向きです。

<デメリット>
 ・技術上の短所
 ・通常の想定で発生する不具合
 ・自分自身でコントロール出来る不具合
 ・発生頻度が多く、最初から考慮しておきべき事象


倫理

 倫理は、人それぞれ考え方があると思います。

 しかし、技術士試験の場合は、技術士としての倫理を記載しなければなりません。

 技術士の倫理とは、「コンピテンシー」と「技術士倫理綱領」に記載されています。

 なお、コンピテンシーは2023年1月に、技術士倫理綱領は2023年3月に改定されています。

コンピテンシー(倫理)

・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、経済及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。

・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守し、文化的価値を尊重すること。

・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。

最新のコンピテンシーはこちら

技術士倫理綱領

 全文は下記のページに掲載していますので、確認してみてください。

 論文への記述は、この技術士倫理綱領から1つ選んで、業務にあった内容を記載すると良いかと思います。

 倫理として記載しやすい内容は、
 ①安全・健康・福利の優先
 ②真実性の確保
 ③公正かつ誠実な履行
 ④秘密情報の保護
 ⑤法令等の遵守
になるかと思います。

最新の技術士倫理綱領はこちら


社会の持続可能性

 社会の持続可能性は、
  ①倫理と同様に、コンピテンシー、技術士倫理綱領の内容をベース
  ②2030年までに達成すべき持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標
をベースに記載するようにしましょう。

 なお、ここでの記載は、「業務遂行」に必要な要件、留意点を記載します。

 解決策から得られる結果を記載するわけではありませんので、ご注意ください。

コンピテンシー(倫理)

・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、経済及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。

・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守し、文化的価値を尊重すること。

・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。

最新のコンピテンシーはこちら

技術士倫理綱領

 全文は下記のページに掲載していますので、確認してみてください。

 論文への記述は、この技術士倫理綱領から1つ選んで、業務にあった内容を記載すると良いかと思います。

 社会の持続可能性として記載しやすい内容は、
 ①持続可能な社会の実現
 ②継続研鑽と人材育成
になるかと思います。

最新の技術士倫理綱領はこちら

持続可能な開発目標(SDGs)

 SDGsはキーワードの一つです。したがって、キーワード学習等を通じて、理解を深めておきましょう。

 SDGsの簡易解説は、下記のリンクにまとめていますので、参考にしてみてください。

SDGsの簡易解説はこちら


選択科目 Ⅱ−1

コンピテンシー必須科目Ⅰ選択科目Ⅱ−1選択科目Ⅱ−2選択科目Ⅲ口頭試験
専門的学識
(基本知識理解)

(基本知識理解)
(基本理解レベル)

(業務知識理解)
(業務理解レベル)

(基本知識理解)
問題解決
(課題抽出)
(方策提起)

(課題抽出)
(方策提起)
評価
(新たなリスク)

(新たなリスク)
技術者倫理
(社会的認識)
マネジメント
(業務遂行手順)
コミュニケーション
(的確表現)

(的確表現)

(的確表現)

(的確表現)
リーダーシップ
(関係者調整)
継続研さん
試験科目別確認項目

1行に複数の設問がある場合

 選択科目Ⅱ−1では、問題によって1行に複数の設問があります。その場合は、設問を見抜き、その設問ごとに章立てを行います。

事例1 電気電子部門-電気応用(令和4年度)Ⅱ−1−1の場合

問題文
 電磁調理器(IH調理器)の加熱原理特徴及び使用上の留意点について述べよ。

答案の構成例(一例)
(1)加熱原理
  〜〜〜
(2)特徴
  メリット:〜〜〜
  デメリット:〜〜〜
(3)使用上の留意点
  〜〜〜

 この問題の設問は、(1)加熱原理、(2)特徴、(3)使用上の留意点の3つです。そのため、それらを章立てとして記載します。

 また、章立ては設問に忠実に記載します。たとえば、設問に「特徴」とあれば、章立ても「特徴」とします。

 「メリット・デメリット」も「特徴」になりますが、章立てはあくまでも「特徴」と記載します。

 例に記載しているように、小見出しに「メリット」、「デメリット」と分けて記載することはOKです。

事例2 電気電子部門-電気応用(令和3年度)Ⅱ−1−1の場合

問題文
 火力発電所等における環境対策設備の1つに集じん装置がある。方式として遠心式、電気式、ろ過式、湿式などが知られている。このうち、電気式集じん装置(集じん機)について、集じんを行う原理装置の構造について簡単な図を描いて、説明せよ。また、電気式の長所、短所について他の方式と比較して説明せよ。

答案の構成例(一例)
 (1)集じんを行う原理
  〜〜〜
 (2)装置の構造
  〜〜〜
 (3)電気式の長所、短所
  〇〇方式と比較した長所、短所を記載する。
  1.長所
   ①〜〜〜
   ②〜〜〜
   ③〜〜〜
  2.短所
   ①〜〜〜
   ②〜〜〜
   ③〜〜〜

 この問題の設問は、(1)集じんを行う原理、(2)装置の構造、(3)長所・短所の3つです。そのため、それらを章立てとして記載します。

 なお、本設問の記載は「長所・短所」なので、章立てもそれに合わせます。「特徴」、「メリット・デメリット」のような章立てはしません。

 また、長所と短所はそれぞれ別にしたほうが記載しやすいでしょう。その場合は、小見出しにして記載します。


特徴、メリット・デメリット、長所・短所

 特徴、メリット・デメリット、長所・短所などを記述する設問は多くあります。

 この場合、何と比較した特徴なのか、何と比較したメリット・デメリットなのか等、比較対象を記載するようにしましょう。

 「設問に〇〇と比較して」と記載していない場合でも、比較対象は記載するようにしましょう。

 また、比較対象が複数ある場合、表を用いることで効果的に記述することができます。

 この場合、細かい数値の比較などは不要です。◎、◯、△、✗程度の比較をすればよいでしょう。

表を用いた特徴の記載例

A方式B方式C方式D方式
項目1
項目2
項目3
項目4

原理

 原理は、基本的に箇条書きで記載することをおすすめします。

 箇条書きにすることで、どのような流れで動作するのか、わかりやすく記載することができます。

 なお、箇条書きにするときは、体言止めにし、文末に「。」は記載しません。

事例:電磁誘導方式による非接触給電の原理

添削前
 ファラデーの電磁誘導法則を利用した電力伝送方式である。一対のコイルを用いる。片方(送信コイル側)に交流電圧を印加し、磁界を発生させ、もう片方(受信コイル側)がその磁界を受けて電力を発生させる。

添削後
 ファラデーの電磁誘導法則を利用した電力伝送方式である。(図を記載する)
 ①コイルの1次側に交流電圧を印加
 ②1次コイルと2次コイルを貫くように磁界が発生
 ③コイルの2次側では、磁束を打ち消すように誘導起電力が発生
 ④この誘導起電力を外部に取り出し活用


図を用いた説明

 Ⅱ−1では、図を用いて説明することも多々あります(設問で要求される場合もあります)。

 この場合、図に記載した内容は、答案論文のどの部分になるか、わかるように記載しましょう。

 特に、図の説明と文章が不一致の場合、大幅に減点されます。

 具体的には、下記の例のように、図の番号と文章の番号を一致させます。

図と文章の記載例
(1)太陽電池の動作原理
 太陽光エネルギーがpn接合半導体に入射
 価電子帯にある電子が伝導帯へ遷移
 遷移した電子は拡散および空乏層の電界によりドリフトしn型半導体へ移動
 この電子を外部回路に取り出すことで電流が発生


図表を用いた説明の注意点

 令和5年度の受験申込み案内にて、採点に際しての取り扱いが追加されました。

 5.採点に際しての取り扱い
 (中略)
(3)答案用紙は、A4版、片面のみ 24 字×25 行の計 600 字詰めです。
 原則として1マス1文字として解答してください。(図表を用いて解答する場合を含む。)
 なお、英字・数字は1マス2文字を目安としてください。(図表を用いて解答する場合を含む。)
 マスを無視して解答した場合は、採点対象から除外する場合があります。
(令和5年度技術士第二次試験受験申込み案内p23より)

 これまで(令和4年度まで)は、図表についての明言はありませんでした。つまり、図表枠内はいわゆる治外法権で、1マス1文字の制限がありませんでした。

 しかし、令和5年度の受験申込み案内より明言されています。

 論文練習&試験本番ではご注意ください。

 あくまでも著者の考えですが、表はともかく図は1マス1文字は難しい気がします。

 「原則として」とありますが、この原則がどこまで適用されるのかわかりません。

 また、採点委員に、図表内も1マス1文字がどこまで伝わっているのかわかりません。

 しかし、少しでも不安を感じる方は、図表内も1マス1文字で記載しましょう。


選択科目 Ⅱ−2

コンピテンシー必須科目Ⅰ選択科目Ⅱ−1選択科目Ⅱ−2選択科目Ⅲ口頭試験
専門的学識
(基本知識理解)

(基本知識理解)
(基本理解レベル)

(業務知識理解)
(業務理解レベル)

(基本知識理解)
問題解決
(課題抽出)
(方策提起)

(課題抽出)
(方策提起)
評価
(新たなリスク)

(新たなリスク)
技術者倫理
(社会的認識)
マネジメント
(業務遂行手順)
コミュニケーション
(的確表現)

(的確表現)

(的確表現)

(的確表現)
リーダーシップ
(関係者調整)
継続研さん
試験科目別確認項目

調査、検討すべき事項

 単に調査、検討すべき事項を羅列して記載するだけではNGです。

 その調査、検討はなぜ必要なのか、理由を明記しましょう。

 理由を明記するには、以下のような構文にすると良いでしょう。

目的を記載するための構文例
 ・〜〜をするため、〜〜を調査する。
 ・〜〜を目的に、〜〜を調査する。
 ・〜〜の検討が必要である。その理由は、〜〜である。
 ・〜〜の検討を行う。なぜなら、〜〜だからである。

 また、以下に、具体的な事例を想定した記載方法を示します。

事例:電気自動車の電磁両立性

添削前
(1)放射ノイズ量の調査
 駆動モータ用インバータや昇降圧機器のスイッチング動作による放射ノイズを調査する。
(2)ノイズ耐量調査
 車載機器のノイズ耐量を調査する。
(3)機器配置の検討
 車載に搭載する機器の配置を検討する。

添削後
(1)放射ノイズ量の調査
 放射ノイズは、車載機器の誤作動要因となる。そこでエミッション(EMI)対策を検討するため、駆動モータ用インバータや昇降圧機器のスイッチング動作による放射ノイズを調査する。
(2)ノイズ耐量調査
 放射ノイズは完全に除去できない。そこでイミュニティ(EMS)対策を合わせて検討するため、車載機器のノイズ耐量を調査する。
(3)機器配置の検討
 各種機器間の配線は、ノイズの放射や侵入経路となる。そこで、配線ルートを最適化するため、車載に搭載する機器の配置を検討する。


業務を進める手順

 業務を進める手順は、ある程度パターン化できます。過去問や練習問題を通じて、パターン化しておきましょう(2〜5個程度のパターンがあると安心です)。

 実際の試験では、パターン化した内容に、問題のテーマを関連付けて記載すればOKです。

 手順は章立で記載します。そして、その手順(工程)の目的、具体的な内容を文章で記載します。

 パターン化した手順に、設問のテーマに合わせた目的を記載すれば良いでしょう。

 ※目的を記載しないと、一般論的に見えます。一般論の内容では、他の受験生と差別化できません。

業務手順の一例
(1)基本方針の策定、企画及び構想の検討など
(2)基本設計、実施設計、システム設計など
(3)試作品の作成・評価、システム構築・仮運用など
(4)試験、評価、改良など
(5)量産準備、量産開始、システム本運用など

 また、各手順に、概要(1行程度)、留意点(2行程度)、工夫点(2〜3行程度)を記載します。
 留意点と工夫点のみを記載している論文が多く見られます。が、その手順で何を行うのか説明がないと、読み手に伝わりません。


留意点

 「留意」とはどのような意味でしょうか。また、「注意」と何が違うのでしょうか。

 実用日本語表現辞典によると、以下のように記載されています。

「留意」とは、「意に留める」こと、「気に留める」こと、「心に留め置く」ことを意味する表現である。

「注意」は「意を注ぐ」と読み下せる表現であり、「気をつける」「気を配る」「心を向ける」という意味合いの見出せる表現である。

よって留意と注意の違いとしては、
 ・「留意」は「心の片隅に置いておき失われないようにする」といった意味合い
 ・「注意」は「意識を対象へと傾けておく」といった意味合いである。

実用日本語表現辞典より

 つまり、意識を常に対象に傾けておく必要はないけど心には留めておいてね、といった意味合いになります。

 車に注意して横断する、細部に注意を払う、同じ間違いをしないよう注意した、とは言いますが、「留意」とは言いませんよね。

 したがって、留意事項として記載する内容は、
 ・現在は潜在的な問題であるが、将来顕在化する恐れがある事象
 ・気をつけておかないと、後々失敗を招く事象
を意識して書いてみてください。

 また、留意点を記載すべきところ、工夫点を記載している場合が多いです。留意点と工夫点は明確に分けてください。
  〇〇に留意する必要がある。だから、〇〇を工夫する。
  〇〇に気をつける必要がある。そのため、〇〇を工夫する。
といった構成にしてください。

 よくあるNG集を紹介します。以下のNG事例は気づかずに記載している場合もありますので、見直しなどの際に気をつけてみてください。

NG例

①「おいては」、「必要」が連発で記載
 ○○においては、△△が必要である。また、◎◎においても、☆☆が必要である。さらに、○○においても、△△に留意が必要である。
 →何が必要なのか分かりません。必要な項目は1つに絞り、明確にしてください。

②捻じれ文
 留意点は、○○に留意することである。
 →主語と述語が同じ表現です。「留意点は、〇〇である」の表現にしましょう。

③工夫点を記載してしまう
 留意点:〇〇を考慮して〇〇を行う。
 →〇〇を行う、としている時点で工夫点です。〇〇を考慮するのはなぜか、その理由が留意点です。


工夫点

 業務を進める上で、工夫すべきことを記載します。

 単に工夫することだけ記載するのはNGです。なぜそれが工夫点となるのか、読み手(試験官)に伝わらないからです。

 なぜそれが工夫点になるのか、なぜその工夫点が必要なのか、が分かるように記載しましょう。

 また、留意点と関連付けて記載するようにしてください。
  〇〇に留意する必要がある。だから、〇〇を工夫する。
といった流れです。

 以下の例を参考に、記載してみてください。

工夫点の記載例

・△△を防ぐために、◎◎を行う。

・通常は◯◯だが、今回は△△のため◎◎とする。

・○○には△△が短所となる。そのため、◎◎を合わせて実施する。

・○○を目的に、◎◎をする。具体的には、△△や☆☆である。

 なお、工夫点の記載にも、捻じれ文には注意してください。


関係者との調整方法

 リーダーシップ能力を審査する記述です。

 業務を効率的・効果的に進めるために、どのように調整するのかを記載します。

 ここでの関係者とは
 ・自社内の多系統社員
 ・協力業者
 ・顧客
 ・関係機関(国、自治体、公的機関など)
 ・周辺住民
などが挙げられます。いわゆるステークホルダーですね。

 一方、自社の社長・役員、直属の上司、先輩・後輩などは、関係者として登場させないほうが無難でしょう。

 確かにこれらの人物とも調整が必要ですが、際立った文章になりません(=当たり前の調整内容となってしまいます)。

 多種多様な関係者と様々な利害があるなかで、業務がスムーズに進められるようまとめ上げるのが、リーダーシップです。

 関係者を「ステークホルダー」と一括にはしないようにしましょう。具体的に、どのような関係者と調整が必要なのかを記載します。

 また、5W1Hを意識してください。5W1Hをすべて記載する必要はありませんが、全く無いと具体性がありません。

5W1H
・When(いつ)
 日時、時間、期間、期限など
・Where(どこで)
 開催場所など
・Who(誰が)
 関係者
・What(何を)
 何を調整するか
・Why(目的)
 なぜその調整が必要か
・How(どのように)
 どのように調整を行うか

関係者との調整方策例
例1
 工程遅延を防止するため、〇〇と1ヶ月に1回程度、定例会議を実施する。
 ボトルネックとなる工程を把握し、必要により機材や人材を投入する。
 これにより、遅延することなく業務を遂行する。

例2
 半導体不足により、材料の入手が困難となる可能性がある。
 メーカーとコミュニケーションを密にし、半導体の製造状況を把握する。
 入手困難に陥りそうな場合は、代替部品も検討する。

例3
 周辺住民への理解を得るため、事業計画時に説明会を実施する。
 この際、①技術根拠の提示、②定量的な説明、③メリット・デメリットの明記を心がける。
 また、一方的な説明に終始せず、対話を通じて理解を得る。


選択科目 Ⅲ

コンピテンシー必須科目Ⅰ選択科目Ⅱ−1選択科目Ⅱ−2選択科目Ⅲ口頭試験
専門的学識
(基本知識理解)

(基本知識理解)
(基本理解レベル)

(業務知識理解)
(業務理解レベル)

(基本知識理解)
問題解決
(課題抽出)
(方策提起)

(課題抽出)
(方策提起)
評価
(新たなリスク)

(新たなリスク)
技術者倫理
(社会的認識)
マネジメント
(業務遂行手順)
コミュニケーション
(的確表現)

(的確表現)

(的確表現)

(的確表現)
リーダーシップ
(関係者調整)
継続研さん
試験科目別確認項目

 問題文の構成は、必須科目とほぼ同じです。したがって、ポイントも必須科目とほぼ同じです。

 ここでは、選択科目Ⅲの特有のポイントのみ掲載します。

技術者としての立場

 必須科目では、技術部門の技術者(例:電気電子部門など)としての記述が求められます。

 選択科目Ⅲでは、選択科目の技術者(例:電気応用など)としての記述が求められます。

 したがって、選択科目Ⅲでは、より専門的な技術に着目して記載するようにしましょう。


記述分量

 必須科目では、(4)業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点を記載します。

 しかし、選択科目Ⅲでは、この設問がありません。したがって、(1)、(2)、(3)に対する答案を、より具体的に記述する必要があります。

 特に重要なのが解決策です。必須科目では、解決策の記述分量が限られますが、選択科目Ⅲでは、細かいところまで記述するようにしましょう。

 概ね、各設問に1ページずつ割り当ててください。ただし、(3)リスクとそ対策が1ページ記載できない場合、解決策の記述を少し増やすようにしましょう。

 課題3つ、解決策3つ、リスク・対策2つが目安になります。

骨子の作成と時間配分

骨子の作成

 必須科目、選択科目Ⅱ−2、選択科目Ⅲについては、実際に論文を書き出す前に、骨子を作るようにしましょう。

 練習段階から骨子を作る癖をつけ、試験本番でも骨子を作成してから論文を書き始めます。

 骨子を作成することで、全体的に矛盾がない論文に仕上げることができます。

 骨子のサンプルは、下記リンクから飛べるようにしていますので、参考にしてみてください。
 (一例ですので、ご自身で書きやすいように改良してみてください)

ポイント(全体)
 ・箇条書きで記載する(メモ書き程度で良い)。
 ・実際に記述するものより少し多めに考える。
 ・問題文のテーマに最も合う内容を選択し、論文に記述する。

ポイント(課題)
 ・問題文のテーマと矛盾がないか。
 ・現状→問題点→課題の流れについて、矛盾はないか。
 ・論文は、最重要課題で選んだ課題を最初に記載する。
 ・幅広い観点で記載しているか。

ポイント(解決策)
 ・方針→手法→成果の流れについて、矛盾はないか。
 ・最重要課題に記載した問題点が解消できる内容か。
  (課題と解決策に矛盾はないか)
 ・各々の解決策が似たような内容になっていないか。

ポイント(リスク)
 ・解決策とリスクの間に矛盾はないか。

ポイント(倫理)
 ・技術士倫理綱領に則った内容になっているか。
 ・課題や解決策と矛盾はないか。

ポイント(社会の持続可能性)
 ・技術士倫理綱領、あるいは、SDGsに則った内容になっているか。
 ・課題や解決策と矛盾はないか。

ポイント(調査・検討事項)
 ・目的と内容に矛盾はないか。
 ・幅広い観点で調査を行えているか。

ポイント(業務手順)
 ・業務が遂行できる手順になっているか。
 ・留意点と工夫点に矛盾はないか。

ポイント(関係者との調整)
 ・様々な関係者が登場しているか。
 ・目的と内容に矛盾はないか。

必須科目の骨子はこちら(PDF)

選択科目Ⅱ−2の骨子はこちら(PDF)

選択科目Ⅲの骨子はこちら(PDF)


時間配分

 筆記試験での時間配分の目安を以下に掲載します。

 文字を各スピードや、得意・不得意箇所もあると思いますので、以下をベースにご自身で時間配分は調整してください。

必須科目

 必須科目の試験時間は120分です。

必須科目の時間配分
 ・受験番号等の記載:2分
 ・問題文の確認と選択:5分
 ・骨子の作成:25分
 ・論文の作成:75分(25分/枚)
 ・誤字脱字のチェック、修正:5分以上確保

選択科目

 選択科目は、Ⅱ−1、Ⅱ−2、Ⅲで210分です。

共通事項(目安15分)
 ・受験番号等の記載:5分
 ・誤字脱字のチェック、修正:10分

Ⅱ−1(目安25分)
 問題文の確認と選択:5分
 論文の作成:20分

Ⅱ−2(目安70分)
 問題文の確認と選択:5分
 骨子の作成:15分
 論文の作成:50分(25分/枚)

Ⅲ(目安100分)
 問題文の確認と選択:5分
 骨子の作成:20分
 論文の作成:75分(25枚/枚)


過去問のテーマ

 過去問で出題されたテーマを一覧にしています。

 出題傾向から、翌年度に出題されそうなテーマを予想してみてください。

 リンクのない技術部門は準備中です。準備ができ次第、順次後悔します。

機械部門船舶・海洋部門航空・宇宙部門
電気電子部門化学部門繊維部門
金属部門資源工学部門建設部門
上下水道部門衛生工学部門農業部門
森林部門水産部門経営工学部門
情報工学部門応用理学部門生物工学部門
環境部門原子力・放射線部門総合技術監理部門

2022年9月14日