このページでは、筆記試験の対策として、
①文章作法(全部門対象)
②キーワード学習(全部門対象)
③答案用紙の構成
④設問に対するポイント
を案内します。
文章作法
文章作法と、次に案内する「キーワード学習」は同時に勉強していきましょう。
常体(「〜である」調)で記述する
文章には、敬体の「ですます」調と、常体の「である」調があります。技術士論文では、「である」調で記述するようにしてください。
まちがっても、「ですます」調と「である」調は混在させないでください。
理由①
文章を断定的に言い切ることで、強い印象と説得力のある文章になります。
理由②
文字数を削減することができ、より多くの情報を記述することができます。
句点
「。」のことを言います。文章の終わりに必ず記述します。
また、よくある間違いですが、句点は箇条書き、題目には記述してはいけません。
さらに、( )書きで終わる場合、( )書きの外に句点を記載します。
例
〜である(〇〇を含む)。
読点
「、」のことを言います。主語を明確にするために記述します。
また、接続詞、副詞、条件文の後ろには必ず記述します。
例
しかし、○○と考えられる。
したがって、○○となる。
〇〇と仮定すると、××が得られる。
かぎかっこ
語句を目立たせたい場合、注意を引くために使用します。
例
今後の日本は、さらに「人材不足・後継者不足」が進むであろう。
これを解決するには、「スマートグリッド」を導入することが必要不可欠である。
ひらがな書き
技術論文では、品詞によって漢字・ひらがなの使い分けが一般的です。
以下では、ひらがな書きにする例を記載します。
副詞
動詞、形容詞、形容動詞を修飾する語。
ひらがな表記 | (漢字表記) | 例 |
---|---|---|
いまだに | (未だに) | いまだに解決することが困難である。 |
さまざま | (様々) | さまざまな問題が複合している。 |
きわめて | (極めて) | きわめて重要な問題である。 |
ともに | (共に) | A・Bともに解決できる。 |
わずか | (僅か) | わずかに異なる。 |
接続詞
前後の文や語句の関係を示す語。
ひらがな表記 | (漢字表記) | 例 |
---|---|---|
あるいは | (或いは) | AあるいはB |
および | (及び) | AおよびB |
または | (又は) | AまたはB |
かつ | (且つ) | AかつB |
したがって | (従って) | したがって、〇〇と考える。 |
さらに | (更に) | さらに、〇〇が考えられる。 |
ゆえに | (故に) | ゆえに、○○となる。 |
形容詞・形容動詞
物事の状態や性質が「どのようであるか」を表現する語。
ひらがな表記 | (漢字表記) | 例 |
---|---|---|
さまざま | (様々) | さまざまな方法 |
しがたい | (し難い) | 解決しがたい問題 |
やさしい | (易しい) | やさしい問題 |
よい | (良い) | よい結果 |
してよい | (して良い) | ○○してよい |
一文一義
一文一義とは、一つの文章で一つの意味をもたせることを言います。
文章が長いと、主張したいことがわからず、支離滅裂な表現になってしまいます。
技術論文を書くときは、一文一義を意識しましょう。
文章が長くなるときは、適切な接続語を設けて文章を分割します。
添削前
本件名の課題は〇〇で、私は△△が問題だと考えたので××を提案し、◎%のコスト低減ができた。
添削後
本件名の課題は○○である。私は、△△が問題であると考えた。そこで、××を提案した。その結果、◎%のコスト低減ができた。
その他NG集
話し言葉、表現の不統一、長い文言など、NG集の一例を紹介します。
特に話し言葉は、ここで紹介した以外にも多数ありますので、十分に注意してください。
技術論文のNG集
・〜においては
添削前
工場においては、CO2の削減が求められる。
添削後
工場では、CO2の削減が求められる。
・〜〜が考えられる。
添削前
〇〇の解決には、☆☆の技術を適用することが考えられる。
添削後
〇〇の解決には、☆☆の技術を適用する。
・話し言葉①
添削前
調べ方が甘く、曖昧な点が多い。
添削後
調べ方が不十分で、曖昧な点が多い。
・話し言葉②
添削前
問題が発生した原因は不明である。なので、関係者に聞き取り調査を行った。
添削後
問題が発生した原因は不明である。そこで、関係者に聞き取り調査を行った。
・話し言葉③
添削前
〇〇が一番多い。
添削後
〇〇が最も多い。
・話し言葉④
添削前
はじめに〇〇を行う。それから、☆☆を行う。
添削後
まず、〇〇を行う。次に、☆☆を行う。
・話し言葉⑤
添削前
〇〇である。言い換えると、☆☆である。
添削後
〇〇である。すなわち、☆☆である。
※ただし、技術士論文では言い換え表現はおすすめしません。文字数制限が限られている中で、同じことを2度繰り返し表現するからです。
・話し言葉⑥
添削前
〇〇技術は、他社にも展開できるので推進する。
添削後
〇〇技術は、他社にも展開できるため推進する。
・表現の不統一
添削前
1.CO2削減の拡大
〜〜である。そのため、〜〜が求められている。
(中略)
2.省エネの推進
〜〜である。このため、〜〜が求められている。
添削後
1.CO2削減の拡大
〜〜である。そのため、〜〜が求められている。
(中略)
2.省エネの推進
〜〜である。そのため、〜〜が求められている。
・長い表現
添削前
〇〇を向上していくことが重要である。
添削後
〇〇を向上することが重要である。
キーワード学習
キーワード学習は、筆記試験全般の対策になります。
キーワード学習のやり方、キーワードの抽出方法などを解説します。
キーワード学習とは?
キーワード学習とは、過去問、最近のトピックス、白書などからキーワードとなるような語句を抽出し、そのキーワードについて、
①概要
②原理・構成
③特徴(メリット・デメリット)
④課題
⑤問題点
⑥解決策
⑦応用例
⑧今後の展望
などをA4用紙1枚にまとめる学習方法を言います。
抽出するキーワード数は、部門によって異なりますが、100〜300個程度を目安にするといいでしょう。
(著者の場合、電気電子部門の電気応用で受験しましたが、最終的に101個のキーワードを作成しました)
最初に述べた文章作法と、キーワード学習を組み合わせて、筆記試験の対策を行うと効率的です。
キーワード学習のメリット
①概要、②原理・構成、③特徴はⅡ−1、Ⅱ−2の対策になります。
④課題、⑤問題点、⑥解決策、⑦応用例、⑧今後の展望は、Ⅰ、Ⅲの対策になります。
つまり、キーワード学習で、全問題の対策を一度に行うことができます。
キーワードの抽出方法
Ⅰの問題は、日本が抱える課題を問題のテーマにしており、技術部門の目線で解答することが求められています。
(例えば、地球温暖化、技術者不足、自然災害、Society5.0、SDGsなど。一部例外もあり)
一方、Ⅱ、Ⅲの問題は、技術部門が抱える課題を問題のテーマにしており、技術部門(専門分野)の目線で解答することが求められています。
(電気電子部門の場合、例えば、自動運転技術、設備の老朽更新、再生可能エネルギーなど。一部例外もあり)
まず、Ⅰの問題からキーワードを抽出してみましょう。サンプルとして、令和4年度の電気電子部門の過去問からキーワードを抽出してみます。
キーワード
技術者不足、遠隔医療
次に、Ⅱ、Ⅲの問題からキーワードを抽出してみましょう。サンプルとして、令和4年度の電気電子部門(電気応用)の過去問からキーワードを抽出してみます。
キーワード
Ⅱ−1の問題より
電磁調理器、飛行時間計測、LiDAR、熱電効果、パワーエレクトロニクス、フィルムコンデンサ、アルミ電解コンデンサ
Ⅱ−2の問題より
列車の無人運転、逆走防止システム、受配電設備、密閉型開閉装置、絶縁支持碍子
Ⅲの問題より
大型誘導電動機、ITS(高度道路交通システム)、自動車の運転支援システム
キーワード学習のサンプル
著者が受験時に作成したキーワード集のサンプルです。
題材は電力線通信とLRT。テーマによって書けいない箇所もありますが、そのような場合は空白でOKです。
また、図表などは手書きでも描けるよう、シンプルなものにしましょう。
キーワード一覧
必須科目キーワード
技術士試験の必須科目では、現代社会が抱えている様々な問題がテーマとして出題されます。
ここでは、現代社会に関連するキーワード一覧を公開します。
どのテーマが出題されても、概要をイメージできるようにしておきましょう。
部門別キーワード
表のリンク先がある部門は、キーワード一覧を公開している部門です。
総合技術監理部門は、技術士会が公表する総監キーワードの最新版をリンク先としています。
なお、著者は電気電子部門の技術士です。
他部門を受験される方は、記載されている内容以外にもキーワードになり得るかもしれません。
ご自身で過去問分析などをしてキーワード抽出をしてください。
機械部門 | 船舶・海洋部門 | 航空・宇宙部門 |
電気電子部門 | 化学部門 | 繊維部門 |
金属部門 | 資源工学部門 | 建設部門 |
上下水道部門 | 衛生工学部門 | 農業部門 |
森林部門 | 水産部門 | 経営工学部門 |
情報工学部門 | 応用理学部門 | 生物工学部門 |
環境部門 | 原子力・放射線部門 | 総合技術監理部門 |
答案用紙の構成
電気電子部門を例に、答案用紙の構成について説明します。
共通事項
設問ごとに章立てを行います。
章立てには下線部を引くと見やすくなります。
(章立てには0.9mmのシャーペンで記載すると良い、というアドバイスも見かけますが、著者はどちらでも良いかと思います)
設問に過不足なく答えることが重要です。
たとえば、課題を3つ抽出し、とあれば、記載する課題は3つです。2つや4つはNGです。
また、各科目で問われている内容(合格基準)を意識しましょう。各科目で問われているコンピテンシーは異なります。
必須科目
構成例
ポイント
必須科目(Ⅰ)のポイント
・設問ごとに章立てを行い、問われている内容を小見出しとして記述する
・課題の観点は、問題文に記載されているか否かを問わず、記載する
幅広い観点から抽出していることを試験官にアピールする
・観点の指定がない場合は、人、モノ、金、情報、安全などを観点にすると良い
選択科目
構成例(電力・エネルギーシステム)
構成例(電気応用)
構成例(電子応用)
構成例(情報通信)
構成例(電気設備)
ポイント
選択科目(Ⅱ-1)のポイント
・Ⅱ-1では、問われている内容ごとに章立てを行う(一部例外あり)
・原理、現象などは図を、特徴は表を併用する
・特徴、留意事項などは、何と比較しての特徴なのかを記載する
選択科目(Ⅱ-2)のポイント
・問われている内容ごとに章立てする
・調査、検討する事項は3つ程度記載する(幅広い観点で)
人、モノ、金、情報、安全などを観点にすると良い
・手順が多くなる場合は、特に留意と工夫が必要な手順を3つ程度記載する
他の手順は、簡潔に記載する
なお、手順は図を併用すると流れがわかりやすい
・調整方策も3つ程度記載する(幅広い関係者と調整する)
自社、関連会社、多系統、顧客など
選択科目(Ⅲ)のポイント
・設問ごとに章立てを行う
・課題は、幅広い観点からは記述する
人、モノ、金、情報、安全などを観点にすると良い
・複数の解決策は、3つ程度記載する
設問に対するポイント
必須科目
多面的な観点
多面的な観点からの課題の抽出は、複数の異なる側面から問題点を分析し、課題を抽出することになります。
このとき、多面的な観点として、「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」、「ルール」、「基準」、「時間」、「場所」、「環境」、「安全」などに着目して記載すると良いでしょう。
ヒト:技術者(従業員)及び会社(組織)の知識、経験、ノウハウ、男女比、外国人労働者、利便性向上など
モノ:設備の状況(新しい設備か古い設備か)、老朽取替の可否、稼働率、故障率など
カネ:費用の発生、ランニングコスト、イニシャルコスト、既存と比べてコスト増かコスト減かなど
情報:関係法令の改定(及び共有)、情報共有の方法、セキュリティ、テレワーク・在宅勤務など
ルール:既存のルールでの対応可否、関連法令遵守のコンプライアンスなど
基準:基準の見直しの可否、基準の適用など
時間:納期(特に海外情勢による影響)、ボトルネックとなる工程など
場所:景観に考慮すべき場所、塩害を受けやすい場所、自然災害(大雪、雷、台風、地震など)の発生しやすい場所など
環境:自然環境に与える影響、環境法令の遵守、職場の環境整備、騒音、振動など
安全:高所作業・危険作業の有無、技術者(従業員)の健康管理など
課題
単に課題を列挙するだけでは、説得力に欠けます。なぜそれが課題になるのかを明記しましょう。
そのためには、
①現状はどうなっているのか
②問題点は何か
③だから課題をどうするか
といった流れで考えると良いでしょう。
<課題の書き方>
①課題を小見出しで記載する(観点も合わせて記載する)
②現状を記載する
③問題点を記載する
④課題(やるべきこと、達成すべきこと)を記載する
事例:地方都市への電気自動車の普及・拡大に伴う課題
添削前
(1)充電スタンドの普及
電気自動車の普及には、充電スタンドの普及が課題である。
添削後
(1)充電スタンドの普及(観点:利便性)
現状:2021年現在、都内では1km2あたり1基以上の充電スタンドが整備されている。一方、北海道や東北などの地域では、都内の100分の1以下の設置数である。
問題点:充電1回あたりの走行距離は年々増加している。しかし、充電スタンドの少なさは、充電切れへの不安心理からEV普及の足かせとなる。
課題:したがって、EVの普及拡大には、充電スタンドの設置数増加が必要不可欠である。
最も重要と考える課題
(2)では、「(1)で抽出した課題の中から最も重要と考える課題」と「解決策」を記述します。
まず、最も重要と考える課題を選ぶときに、その理由も必ず記述しましょう。
添削前
私は、〇〇の課題が最も重要であると考える。
と記述すると、試験官(採点者)によっては、「いやいや、△△の課題のほうが重要じゃない?」と思われてしまう可能性があります。
添削後
私は、☆☆の理由から、〇〇の課題が最も重要であると考える。
と記述をしましょう。理由の有り無しで、論文のイメージが大きく異なります。他の受験者との差別化にも繋がります。
解決策
単に解決策のみを記載するだけでは、説得力に欠けます。そのため、以下のいずれかの方針で記載するようにしましょう。
<解決策の書き方①>
①解決策の発想にいたった着眼点
②解決策の具体的な方法・手法
③解決策が達成できた場合の成果
<解決策の書き方①の具体例>
添削前
(1)IoT機器の導入
カメラやセンサーを活用して、IoT機器の導入を図る。
添削後
(1)IoT機器の導入
現在は、人力作業が大半である。そこで、人力作業の自動化に着目し、IoT機器の導入を行う。
具体的には、〜〜〜(具体的な解決方法)
その結果、人力作業のうち30%が自動化され、生産性向上へとつながる。
<解決策の書き方②>
①解決策の方針・方向性
②解決策の具体的な方法・手法
③解決策を達成できた場合の成果
<解決策の書き方②の具体例>
添削前
(1)IoT機器の導入
カメラやセンサーを活用して、IoT機器の導入を図る。
添削後
(1)IoT機器の導入
〇〇の課題を達成するため、カメラやセンサーを活用して、IoT機器の導入を図る。
具体的には、〜〜〜(具体的な解決方法)
その結果、〇〇の課題が達成できる。
<着眼点や方針の書き方>
着眼点や方針は、次に述べる解決策の前段として記載します。どのような技術を用いるのか、なぜその技術が有効なのかを意識しながら、1〜2行程度で記載しましょう。
・〇〇に着目し、☆☆技術を導入する。
・〇〇の課題を達成するため、☆☆技術の導入を図る。
・〇〇のため、☆☆技術を導入すれば△△が得られると考える。
・一般的には〇〇を導入するが、本件は△△のため、☆☆を導入する。
<解決策の具体的な方法の書き方>
ここでは、一般的な技術の説明に終始してはいけません。
世の中にある技術を、問題文(あるいは設定した課題)のテーマに合わせてどのように活用するのか、具体的に記載します。
ここから解決策ですよ、と示すために、文頭に「具体的には、」などの表現を使うと、読みやすい文章になります。ただし、「例えば、」などの表現は、他人事に見えてしまいますので避けましょう。
解決策は、テーマに合わせて様々に記載できます。そのため、添削などを通じて自分のものにしていきましょう。
<成果の書き方>
最後に、解決策を達成できた場合の成果を記述しましょう。設問に「成果(効果)を述べよ」と記載がなくても、成果は述べるようにします。
成果も本題ではありませんので、1〜2行程度で記載します。
ただし、解決策は課題を達成するために行うものです。そのため、課題と無関係な成果では意味がありません。課題、解決策、成果が矛盾の無いよう記載しましょう。
なお、部門によっては、(3)で成果を記述する場合があります。その場合は、(3)で記述するようにしましょう。
リスク
「リスク」とは、現在は顕在化していないが仮に顕在化すると、解決策が無意味になる重大な悪影響で、かつ、不確実な事象の事を言います。
多くの受験生は、技術上のデメリットなどを記載します。しかし、確実に発生する事象や技術上のデメリットは、事前に検討するべき内容です。したがって、それはリスクではなく「問題点」に該当します。
リスクは、第三者の影響によるものをメインに考えましょう。
また、リスク = 被害規模 × 発生確率で表現することも出来ます。そのため、リスク対策では、
①被害規模を低減させる対策
②発生確率を低減させる対策
を記載すれば良いでしょう。
さらに、リスクに対する手段として、次の4パターンが考えられます。
①リスク低減:リスクを受容できるまで被害規模や発生確率を低減させる
②リスク回避:低減策が不経済や困難な場合は、リスクを伴う活動自体を中止する
③リスク移転:保険等に加入し、リスク発生時には第三者から損失補填を受ける
④リスク保有:顕在化しても悪影響は軽微のため、対策は講じない
技術士試験の答案では、①リスク低減を中心に記載しましょう。リスクは完全にゼロにすることは出来ません。リスクを許容できるまで低減できれば、あとはリスク保有も視野に入れましょう。
具体的なリスク事例
・不良品の発生
・工期遅延
・労災、公衆災害の発生
・大規模自然災害
・機械、設備、AI、ICT等の故障、誤作動
・海外情勢の不安定によるコスト増
・情報漏えい
・サイバー攻撃
・通信障害
なお、多くの受験生は、リスクに「サイバー攻撃」を記載します。そうすると、他の受験生と差が開きませんので、
・サイバー攻撃のリスクは、より深く調べておく
・練習段階では、できるだけ様々なリスクを記載できるようにしておく
ことをおすすめします。
倫理
倫理は、人それぞれ考え方があると思います。
しかし、技術士試験の場合は、技術士としての倫理を記載しなければなりません。
技術士の倫理とは、「コンピテンシー」と「技術士倫理綱領」に記載されています。
なお、コンピテンシーは2023年1月に、技術士倫理綱領は2023年3月に改定されています。
コンピテンシー(倫理)
・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、経済及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守し、文化的価値を尊重すること。
・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。
技術士倫理綱領
全文は下記のページに掲載していますので、確認してみてください。
論文への記述は、この技術士倫理綱領から1つ選んで、業務にあった内容を記載すると良いかと思います。
倫理として記載しやすい内容は、
①安全・健康・福利の優先
②真実性の確保
③公正かつ誠実な履行
④秘密情報の保護
⑤法令等の遵守
になるかと思います。
社会の持続可能性
倫理と同様に、コンピテンシー、技術士倫理綱領の内容をベースに記載すると良いでしょう。
なお、ここでの記載は、「業務遂行」に必要な要件、留意点を記載します。
解決策から得られる結果を記載するわけではありませんので、ご注意ください。
コンピテンシー(倫理)
・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、経済及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守し、文化的価値を尊重すること。
・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。
技術士倫理綱領
全文は下記のページに掲載していますので、確認してみてください。
論文への記述は、この技術士倫理綱領から1つ選んで、業務にあった内容を記載すると良いかと思います。
社会の持続可能性として記載しやすい内容は、
①持続可能な社会の実現
②継続研鑽と人材育成
になるかと思います。
選択科目 Ⅱ−1
1行に複数の設問がある場合
選択科目Ⅱ−1では、問題によって1行に複数の設問があります。その場合は、設問を見抜き、その設問ごとに章立てを行います。
事例1 電気電子部門-電気応用(令和4年度)Ⅱ−1−1の場合
問題文
電磁調理器(IH調理器)の加熱原理、特徴及び使用上の留意点について述べよ。
答案の構成例(一例)
(1)加熱原理
〜〜〜
(2)特徴
メリット:〜〜〜
デメリット:〜〜〜
(3)使用上の留意点
〜〜〜
この問題の設問は、(1)加熱原理、(2)特徴、(3)使用上の留意点の3つです。そのため、それらを章立てとして記載します。
また、章立ては設問に忠実に記載します。たとえば、設問に「特徴」とあれば、章立ても「特徴」とします。
「メリット・デメリット」も「特徴」になりますが、章立てはあくまでも「特徴」と記載します。
例に記載しているように、小見出しに「メリット」、「デメリット」と分けて記載することはOKです。
事例2 電気電子部門-電気応用(令和3年度)Ⅱ−1−1の場合
問題文
火力発電所等における環境対策設備の1つに集じん装置がある。方式として遠心式、電気式、ろ過式、湿式などが知られている。このうち、電気式集じん装置(集じん機)について、集じんを行う原理、装置の構造について簡単な図を描いて、説明せよ。また、電気式の長所、短所について他の方式と比較して説明せよ。
答案の構成例(一例)
(1)集じんを行う原理
〜〜〜
(2)装置の構造
〜〜〜
(3)電気式の長所、短所
〇〇方式と比較した長所、短所を記載する。
1.長所
①〜〜〜
②〜〜〜
③〜〜〜
2.短所
①〜〜〜
②〜〜〜
③〜〜〜
この問題の設問は、(1)集じんを行う原理、(2)装置の構造、(3)長所・短所の3つです。そのため、それらを章立てとして記載します。
なお、本設問の記載は「長所・短所」なので、章立てもそれに合わせます。「特徴」、「メリット・デメリット」のような章立てはしません。
また、長所と短所はそれぞれ別にしたほうが記載しやすいでしょう。その場合は、小見出しにして記載します。
特徴、メリット・デメリット、長所・短所
特徴、メリット・デメリット、長所・短所などを記述する設問は多くあります。
この場合、何と比較した特徴なのか、何と比較したメリット・デメリットなのか等、比較対象を記載するようにしましょう。
「設問に〇〇と比較して」と記載していない場合でも、比較対象は記載するようにしましょう。
また、比較対象が複数ある場合、表を用いることで効果的に記述することができます。
この場合、細かい数値の比較などは不要です。◎、◯、△、✗程度の比較をすればよいでしょう。
表を用いた特徴の記載例
A方式 | B方式 | C方式 | D方式 | |
項目1 | ◯ | ◎ | △ | ✗ |
項目2 | △ | △ | ◎ | ✗ |
項目3 | ◎ | △ | ✗ | ◎ |
項目4 | ◯ | ✗ | ◯ | △ |
原理
原理は、基本的に箇条書きで記載することをおすすめします。
箇条書きにすることで、どのような流れで動作するのか、わかりやすく記載することができます。
なお、箇条書きにするときは、体言止めにし、文末に「。」は記載しません。
事例:電磁誘導方式による非接触給電の原理
添削前
ファラデーの電磁誘導法則を利用した電力伝送方式である。一対のコイルを用いる。片方(送信コイル側)に交流電圧を印加し、磁界を発生させ、もう片方(受信コイル側)がその磁界を受けて電力を発生させる。
添削後
ファラデーの電磁誘導法則を利用した電力伝送方式である。(図を記載する)
①コイルの1次側に交流電圧を印加
②1次コイルと2次コイルを貫くように磁界が発生
③コイルの2次側では、磁束を打ち消すように誘導起電力が発生
④この誘導起電力を外部に取り出し活用
図を用いた説明
Ⅱ−1では、図を用いて説明することも多々あります(設問で要求される場合もあります)。
この場合、図に記載した内容は、答案論文のどの部分になるか、わかるように記載しましょう。
特に、図の説明と文章が不一致の場合、大幅に減点されます。
具体的には、下記の例のように、図の番号と文章の番号を一致させます。
図と文章の記載例
(1)太陽電池の動作原理
①太陽光エネルギーがpn接合半導体に入射
②価電子帯にある電子が伝導帯へ遷移
③遷移した電子は拡散および空乏層の電界によりドリフトしn型半導体へ移動
④この電子を外部回路に取り出すことで電流が発生
図表を用いた説明の注意点
令和5年度の受験申込み案内にて、採点に際しての取り扱いが追加されました。
5.採点に際しての取り扱い
(中略)
(3)答案用紙は、A4版、片面のみ 24 字×25 行の計 600 字詰めです。
原則として1マス1文字として解答してください。(図表を用いて解答する場合を含む。)
なお、英字・数字は1マス2文字を目安としてください。(図表を用いて解答する場合を含む。)
マスを無視して解答した場合は、採点対象から除外する場合があります。
(令和5年度技術士第二次試験受験申込み案内p23より)
これまで(令和4年度まで)は、図表についての明言はありませんでした。つまり、図表枠内はいわゆる治外法権で、1マス1文字の制限がありませんでした。
しかし、令和5年度の受験申込み案内より明言されています。
論文練習&試験本番ではご注意ください。
あくまでも著者の考えですが、表はともかく図は1マス1文字は難しい気がします。
「原則として」とありますが、この原則がどこまで適用されるのかわかりません。
また、採点委員に、図表内も1マス1文字がどこまで伝わっているのかわかりません。
しかし、少しでも不安を感じる方は、図表内も1マス1文字で記載しましょう。
選択科目 Ⅱ−2
調査、検討すべき事項
単に調査、検討すべき事項を羅列して記載するだけではNGです。
その調査、検討はなぜ必要なのか、理由を明記しましょう。
理由を明記するには、以下のような構文にすると良いでしょう。
目的を記載するための構文例
・〜〜をするため、〜〜を調査する。
・〜〜を目的に、〜〜を調査する。
・〜〜の検討が必要である。その理由は、〜〜である。
・〜〜の検討を行う。なぜなら、〜〜だからである。
また、以下に、具体的な事例を想定した記載方法を示します。
事例:電気自動車の電磁両立性
添削前
(1)放射ノイズ量の調査
駆動モータ用インバータや昇降圧機器のスイッチング動作による放射ノイズを調査する。
(2)ノイズ耐量調査
車載機器のノイズ耐量を調査する。
(3)機器配置の検討
車載に搭載する機器の配置を検討する。
添削後
(1)放射ノイズ量の調査
放射ノイズは、車載機器の誤作動要因となる。そこでエミッション(EMI)対策を検討するため、駆動モータ用インバータや昇降圧機器のスイッチング動作による放射ノイズを調査する。
(2)ノイズ耐量調査
放射ノイズは完全に除去できない。そこでイミュニティ(EMS)対策を合わせて検討するため、車載機器のノイズ耐量を調査する。
(3)機器配置の検討
各種機器間の配線は、ノイズの放射や侵入経路となる。そこで、配線ルートを最適化するため、車載に搭載する機器の配置を検討する。
業務を進める手順
業務を進める手順は、ある程度パターン化できます。過去問や練習問題を通じて、パターン化しておきましょう(2〜5個程度のパターンがあると安心です)。
実際の試験では、パターン化した内容に、問題のテーマを関連付けて記載すればOKです。
手順は章立で記載します。そして、その手順(工程)の目的、具体的な内容を文章で記載します。
パターン化した手順に、設問のテーマに合わせた目的を記載すれば良いでしょう。
※目的を記載しないと、一般論的に見えます。一般論の内容では、他の受験生と差別化できません。
業務手順の一例
(1)基本方針の策定、企画及び構想の検討など
(2)基本設計、実施設計、システム設計など
(3)試作品の作成・評価、システム構築・仮運用など
(4)試験、評価、改良など
(5)量産準備、量産開始、システム本運用など
留意点
「留意」とはどのような意味でしょうか。また、「注意」と何が違うのでしょうか。
実用日本語表現辞典によると、以下のように記載されています。
「留意」とは、「意に留める」こと、「気に留める」こと、「心に留め置く」ことを意味する表現である。
「注意」は「意を注ぐ」と読み下せる表現であり、「気をつける」「気を配る」「心を向ける」という意味合いの見出せる表現である。
よって留意と注意の違いとしては、
・「留意」は「心の片隅に置いておき失われないようにする」といった意味合い
・「注意」は「意識を対象へと傾けておく」といった意味合いである。
実用日本語表現辞典より
つまり、意識を常に対象に傾けておく必要はないけど、心には留めておいてね、といった意味合いになります。
車に注意して横断する、細部に注意を払う、同じ間違いをしないよう注意した、とは言いますが、「留意」とは言いませんよね。
したがって、留意事項として記載する内容は、
・現在は潜在的な問題であるが、将来顕在化する恐れがある事象
・気をつけておかないと、後々失敗を招く事象
を意識して書いてみてください。
また、よくあるNG集を紹介します。以下のNG事例は気づかずに記載している場合もありますので、見直しなどの際に気をつけてみてください。
NG例
①「おいては」、「必要」が連発で記載
○○においては、△△が必要である。また、◎◎においても、☆☆が必要である。さらに、○○においても、△△に留意が必要である。
②捻じれ文
留意点は、○○に留意することである。
工夫点
業務を進める上で、工夫すべきことを記載します。
単に工夫することだけ記載するのはNGです。なぜそれが工夫点となるのか、読み手(試験官)に伝わらないからです。
なぜそれが工夫点になるのか、なぜその工夫点が必要なのか、が分かるように記載しましょう。
以下の例を参考に、記載してみてください。
工夫点の記載例
・△△を防ぐために、◎◎を行う。
・通常は◯◯だが、今回は△△のため◎◎とする。
・○○には△△が短所となる。そのため、◎◎を合わせて実施する。
・○○を目的に、◎◎をする。具体的には、△△や☆☆である。
なお、工夫点の記載にも、捻じれ文には注意してください。
関係者との調整方法
リーダーシップ能力を審査する記述です。
業務を効率的・効果的に進めるために、誰とどのように調整するのかを記載します。
ここでの関係者とは
・自社内の多系統社員
・協力業者
・顧客
・関係機関(国、自治体、公的機関など)
・周辺住民
などが挙げられます。いわゆるステークホルダーですね。
一方、自社の社長・役員、直属の上司、先輩・後輩などは、関係者として登場させないほうが無難でしょう。
確かにこれらの人物とも調整が必要ですが、際立った文章になりません(=当たり前の調整内容となってしまいます)。
多種多様な関係者と様々な利害があるなかで、業務がスムーズに進められるようまとめ上げるのが、リーダーシップです。
また、関係者を「ステークホルダー」と一括にはしないようにしましょう。具体的に、どのような関係者と調整が必要なのかを記載します。
選択科目 Ⅲ
問題文の構成は、必須科目とほぼ同じです。したがって、ポイントも必須科目とほぼ同じです。
ここでは、選択科目Ⅲの特有のポイントのみ掲載します。
技術者としての立場
必須科目では、技術部門の技術者(例:電気電子部門など)としての記述が求められます。
選択科目Ⅲでは、選択科目の技術者(例:電気応用など)としての記述が求められます。
したがって、選択科目Ⅲでは、より専門的な技術に着目して記載するようにしましょう。
記述分量
必須科目では、(4)業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点を記載します。
しかし、選択科目Ⅲでは、この設問がありません。したがって、(1)、(2)、(3)に対する答案を、より具体的に記述する必要があります。
特に重要なのが解決策です。必須科目では、解決策の記述分量が限られますが、選択科目Ⅲでは、細かいところまで記述するようにしましょう。
概ね、各設問に1ページずつ割り当ててください。ただし、(3)リスクとそ対策が1ページ記載できない場合、解決策の記述を少し増やすようにしましょう。
課題3つ、解決策3つ、リスク・対策2つが目安になります。
過去問のテーマ
過去問で出題されたテーマを一覧にしています。
出題傾向から、翌年度に出題されそうなテーマを予想してみてください。
リンクのない技術部門は準備中です。準備ができ次第、順次後悔します。